下水道の使用抑制が呼びかけられた期間について、都内の私立高校に通う男子高校生は「親から“トイレは学校や駅で済ませてきなさい”と言われて、なんとなく守りましたね」と振り返る。

いつまでも救出されないのが気になって

節水のため紙皿で料理を提供した埼玉・八潮市の陥没事故現場近くのパキスタン料理店『カラチの空』オーナーのザヒット・ジャベイドさん(2025年2月/撮影・週刊女性)
節水のため紙皿で料理を提供した埼玉・八潮市の陥没事故現場近くのパキスタン料理店『カラチの空』オーナーのザヒット・ジャベイドさん(2025年2月/撮影・週刊女性)
【写真】陥没事故の現場近くで節水しながら営業を続けるパキスタン料理店のオーナー

 現場近くでパキスタン料理店『カラチの空』を経営するザヒット・ジャベイドさん(59)は、事故直後から、なるべく水道を使わないようにするため、料理を紙皿に盛りつけ、飲み物は紙コップでの提供に切り替えた。下水道の使用自粛が解除されても続けてきた。

「そうすればゴミは出るけど、排水を抑えられるから。運転手の男性がかわいそうで、早く助けてあげてほしかったんです。店にはパキスタン人のお客さんも来ますが、日本人客も多いし、人命救助に国籍は関係ないですよ。時間を限定して、みんなで一斉に排水をストップできたら、こんなに長引かなかったのではないか。僕も現場を車で通っていたし、人ごとではないです。いつまでも救出されないのが気になって、運転手さんが助かる夢を何度か見ました」(ジャベイドさん、以下同)

 購入した紙皿と紙コップは約5万円分。まだ大量に残っているが、救助活動再開まで時間がかかる見通しが示されたため、2月24日から通常の食器に切り替えたという。

「日本人のお客さんが“あと最低3か月はかかるから元のやり方に戻したほうがいいよ”とすすめてくれたんです。近くの道が通行止めになった影響で売り上げは約8割も減り、貯金を取り崩してスタッフの給料を払っています。紙皿で料理を出したとき、外国人客の中には顔をしかめる人もいました。でも日本人はみんな理解を示し、むしろ喜んで協力してくれました」

 在庫として抱えた約600枚の紙皿と、大量の紙コップはテイクアウトなどに転用するという。

今も水をジャブジャブ使う気になれない

 ジャベイドさんに限らず、下水道の使用自粛が解除されても自主的に節水に取り組んできた住民はいる。

埼玉・八潮市の陥没事故の工事は昼夜問わず続いていた(2025年2月)
埼玉・八潮市の陥没事故の工事は昼夜問わず続いていた(2025年2月)

運転手さんのご家族の気持ちを考えると、今も水をジャブジャブ使う気にはなれません。お風呂は2、3日に1回。シャワーは使いません。一時期は自粛地域外の銭湯も利用させてもらいました」(前出・70代の女性)

 穴の下流に取り残された運転席付近に排水が届くことを気にしているようだ。前出の80代女性も、

「とにかく運転手さんがお気の毒。ご家族がどれほど心を痛めているかと思うと、ぜいたくは言えません。多少のことは我慢しなくちゃと思っています」

 と話す。近隣住民を苦悩させる悪臭、騒音、振動についてもエリアによって度合いの濃淡があるようで「うちはまだマシなほうだから」と言葉をのみ込む住民も。

 救出活動が最優先なのは間違いない。しかし、近隣住民の我慢や配慮に甘えて住民を追い込むことにならないよう、行政にはしっかりと舵取りをしてもらいたい。