「家なんか汚くても死にはしない」という言葉があるが、汚い家では本当に死人が出ることも“まれにあること”。あらゆる場所やシチュエーションで行われる“清掃”の現場では、さまざまな事件が起こることもある。

 今回はハウスクリーニング会社「エムズクリン」の社長である前田清貴さんに、キャリア30年の間に起こった衝撃のエピソードについて教えてもらった。

●防毒マスクも効かない異臭。天井裏で腐敗する“元”住人

 ある日、前田さんが不動産業者から頼まれた案件は、夜逃げをした人が残していった部屋の清掃。現場に行って、すぐに異変に気づいた。

「鍵を開けて入ったら、ものすごく臭いんです。防毒マスクをしても意味がないくらいで。部屋が汚い人の中には、おしっこを紙パックにためていたりするような人もいるのですが、こんなに臭うのは初めてでした」(前田さん、以下同)

 折しも季節は夏。部屋中に立ち込めている異臭に、マスクをしていても10分といられず、不動産業者に「無理だ」と連絡を入れたところ、「ゴミは回収しているから、そんなに臭くはないだろう」と言いつつもやってきた管理会社の人も一瞬で納得、その場は引き揚げることとなった。

「管理会社の人が後日部屋を確認したら、点検口の中で住んでいた人の遺体が見つかったそうです」

 聞けば頻繁に借金取りが来ていたようで、住人が逃げるために点検口へと入り、そのまま天井裏で亡くなったとする線が濃厚だったようだ。その後、遺体が撤去されたあとのクリーニングも依頼されたという……。

「嫌でしたけど、金額はだいぶ上げてもらったので、それならいいかと引き受けました」。地獄の沙汰も金次第、とはこのことか。

夜逃げをした人の部屋からは強烈な異臭が(写真はイメージです)
夜逃げをした人の部屋からは強烈な異臭が(写真はイメージです)

●クレーム率、ほぼ100%!? 新婚夫婦の夢と現実

 前田さんが極力受けないようにしている案件が2つあるという。

「紹介のない初めての人と、新婚さんですね。うちは基本、業者を通しての依頼なので、あえて業者を通さないで依頼しようとしてくる人は、何かの事情があると考えられますから」

 また、新婚の夫婦も「危険」なのだという。

「中古マンションを購入された方からの依頼が多いのですが、新婚さんは夢を見てしまっているので、ハウスクリーニングで新築みたいになると勘違いしているんですよね」

 ほぼ必ずといっていいほど、なんらかのクレームがあるのだとか。

「周りの業者にいろいろ聞きますけど、やっぱりどの業者も新婚さんにはクレームを受けてますね」

 ハウスクリーニングだけで家は変わらないので、新築を買うかリフォームを検討すべき、と全清掃業者が思っているといっても過言ではないようだ。