●業者がかち合うと誰も幸せにならない

「業者」を呼ぶ日はなるべくまとめたい、休みも取りづらいからいっぺんに済ませたい……と思う依頼者側の気持ちはわかるが、実際にやってしまうと業者側からしたら、たまったものではないという。

「ある日お客さんから頼まれて行ったら、エアコンの工事業者とWi-Fiの工事業者が来ててね、こういうことは珍しくないんですが……」

 清掃のホースや脚立などを置いて、Wi-Fi業者とエアコン業者がそれぞれ“お店”を広げてしまうと、ベランダも窓サッシも床掃除も満足にできない。三者が三者とも仕事がはかどらず、時間ばかりがかかるという。

「『うまくやってくれ』って言われても、うまくできるわけがないんですよ(笑)。時間をずらせば大丈夫なこともあるので、もし他の工事を入れる場合は連絡してほしいですね」

 工事がかち合ってしまうと、清掃が満足にできない場所も出てしまい、依頼者側も幸せになれない。くれぐれも清掃を入れるときは、他の業者とかぶらない日程・時間帯を!

某女性歌手の家はものすごく汚かった(写真はイメージです)
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●有名女性歌手から八つ当たりクレーム

 20年ほど前のある日、依頼を受けたのは、有名大御所女性歌手の「I」から。彼女が購入した中古物件の清掃を依頼されたが、行ってびっくりの家だったという。

「なんで買ったのかわからないくらい、ものすごく汚い家でした。柱もヤニだか何かわかりませんが、指でもごっそりこすり取れるほど。30〜40年くらい放っていたレベルの汚さ。建具もすべて洗うくらいのヘビー級物件でした」

 作業をしていると、作業の様子を見に「I」が顔を出したという。

「挨拶をしても無視で、態度がよくないなと思いました」

 翌日にも顔を出した彼女は、「ここに置いておいた書類がない! 勝手に捨てたの!?」と、すごい剣幕で食ってかかってきた。

「結局彼女の勘違いだったことがわかったんですが、謝罪のひとつもなくて。さすがに腹が立ちましたね」

 そのころ彼女は離婚騒動の渦中にあった。いろいろと大変な時期だったのではとも察するが、八つ当たりされるほうはたまったものではない……。

●死んだ母の押し入れに大金。その時、息子の目には涙が

 子どもたちがみんな出ていったあと、年老いたお母さんが一人で住み、そして亡くなった「実家」の清掃を依頼されたときのことである。

「息子さんが大きなものは処分したから、あとの細かいものの処分と清掃の依頼でした。全部お構いなく捨ててくれという感じで、母親でも亡くなってしまうとこうなってしまうんだと、寂しさを覚えましたね」

 とはいえ仕事として片づけを行っていると、押し入れの奥から息子さん宛ての封筒が何通も出てきたという。

「中身は現金で、息子さんのために貯めていたのでしょう。それが次から次へと出てくるものだから、これはちょっと手をつけられないと息子さんに連絡をしました」

 なんとその封筒の束、金額にして約700万円もあったという。金額ではないが、その母の思いの強さに息子さんは号泣し、遺品をきちんと引き取ることにしたという。

「息子さんが急にお母さん思いの子どもに戻って、私もさすがにもらい泣きしてしまいました」