「環境を変えられない」皇族の宿命
この雅子さまの変化について、心理学に詳しい東京未来大学こども心理学部長の出口保行さんはこう分析する。
「お出ましになることを事前に告知できるということは、体調が良いことの表れでしょう。適応障害の場合、ストレスの要因は案外明確ですから、現時点ではお出まし自体はストレス要因になっていないのかもしれません。また、外出を事前に告知できることが自信につながり、ストレスを弱めているとも考えられます。ただ、無理をなさることは禁物です。責任感がお強く、まじめなご性格から、あれもこれもと引き受けてしまわれがちでしょうが、上手にコントロールしていく必要があります」
ご体調は好転しておられるようだが、昨年10月、雅子さまの誕生日に際して発表された医師団の見解には《回復の途上》との記載があった。適応障害を公表して20年以上がたつが、いまだ完治に至らないのは、皇族ならではの理由があるという。新潟青陵大学大学院で教える社会心理学者の碓井真史教授はこう語る。
「精神医学的に適応障害の原因は環境にあると考えられています。過酷な環境、例えばブラック企業などに身を置くことで心身のバランスが崩れてしまうのです。一般的には、ブラック企業といった環境がつらければ、辞職などの対応ができます。しかし、雅子さまを含む皇室の方々は転職も離婚も転居も困難です。原因は環境にあるのに、環境を変えられないというのが、完治を遠のかせているのでしょう」
完璧とは言い切れない状態でも、雅子さまが奮起されている背景には、皇后としての責任感があるようだ。
「上皇ご夫妻は在位中、太平洋戦争の激戦地となった各地を巡る慰霊の旅へ赴かれました。一方、今の両陛下は戦後のお生まれです。ですから今年、戦後80年という節目に平和を再び胸に刻むという目的で、かつての戦地へ足を運ばれるのではないでしょうか。平和の意義を伝え続けるという心持ちで、両陛下とも気合が入っておられると拝察いたします」(前出・つげさん)
ただ、前出の碓井教授は、この“強い責任感”が心の病を引き起こすと説明する。
「心の病気は弱い人がなると思われがちですが、それは誤解です。むしろ能力の高い努力家こそ患いやすいのです。雅子さまは高い能力をお持ちなだけでなく、まじめで努力家でいらっしゃるようにお見受けします。日本や皇室のためにと頑張りすぎてしまい、心がつらくなってしまわれるのです」