オープンから8か月で、すでに15人ほどの元受刑者が勤務しているという『新宿駆け込み餃子』。実はこのお店の支援者の中に、一昨年11月に転移性肝がんによる肝不全でこの世を去った、菅原文太さんも名を連ねているという。
「文太さんは男気と行動力があって、とても繊細な方でもありました。『仁義なき戦い』や『トラック野郎』のときとは、イメージがまったく違いましたね」
取材に答えてくれたのは、『公益社団法人日本駆け込み寺』の代表を務める玄秀盛氏。
「歌舞伎町で13年ほど“駆け込み寺”というDVや金銭トラブル、いじめなどの相談を受ける場所を運営しているのですが、被害者の女性の話を聞くと、“彼が前科者で、職に就けずに、結局、暴力を振るう”という人が多かったんです。そこで加害者の男性を救うためにも、接客業のお店を立ち上げようと考えました」(玄氏)
玄氏は今年4月に新宿・歌舞伎町に元受刑者を積極的に雇用する餃子居酒屋『新宿駆け込み餃子』をオープンさせた。
「今から4年前くらいに文太さんのラジオにゲスト出演させていただいたのですが、出所者への支援事業をやりたいという話をしたら興味を持ってくださったんです。それ以後、東北の被災地支援のチャリティーイベントで『トラック野郎』で着ていた衣装を30着、『仁義なき戦い』のDVD30枚などをオークションのためにいただきました。
その後も寄付金やご自身がやられている山梨の農園から野菜を送っていただいたりと、私たちの活動の支援をしてくださっていたんです」(玄氏)
菅原さんは生前、山梨県北杜市で農薬や化学肥料を使用しない農業を行い、都内の飲食店の数店舗にも野菜を卸していた。そんな活動の最中、菅原さんは他界。
玄氏は「文太さんも“出所者居酒屋ができたら行くよ”と言ってくれていたのに」と肩を落としたという。
「お店のオープン時には、文太さんの奥様からアスパラを8キロほどいただきました。奥様とはいまも連絡を取り合っています。“文太さんの遺志を継ぐ”という意味も込めて、お店を続けていく所存です」