5月30日土曜日、全47都道府県で揺れを観測した小笠原諸島西方沖を震源とするマグニチュード8.1の巨大地震。実は地震学者の間で、その不気味さが話題になっている。

 武蔵野学院大学の島村英紀特任教授に改めて解説してもらう。

「3・11と同じく太平洋プレートが起こした地震です。千島列島から本州、小笠原諸島のもっと南までかかる大きなプレートの周りに、3・11でできたひずみがどんどん広がっている。それが、太平洋プレートの行きつく先である深さ約700キロメートルのところでずれたのが、今回の地震です」

 発生場所とその深さから、今回の地震は、海溝型地震でも直下型地震でもなく、めったにない『深発地震』と分類される。太平洋の奥底から放たれたエネルギーは巨大で、

「47都道府県すべてで、震度1以上を観測しました。沖縄でも揺れを感知した。不穏な空気を感じますね……」

 島村特任教授は声を曇らせ、次のように解説を続ける。

「震源が60~70キロメートルくらいより深いと、地震の被害はあまり出ません。家が倒れる、橋が壊れる、脱線するなどの被害が、M8超えの地震なのに起きませんでした。ただ、プレートに沿って地震の波が伝わるので、プレートの延長線上にある埼玉県北部、東部、神奈川県・二宮町などの地域は、震度が大きかったのです」

■小笠原沖の深発地震がきっかけで巨大地震が起きる可能性

 琉球大学の木村政昭名誉教授は「予想外でしたね」と発生場所の深さに首をひねり、迷いなく言葉を足す。

「大地震がくると私が予想している場所のひとつに、伊豆諸島東方沖がありますが、それよりも南で起こった。ですから、この地震だけで終わらないだろうと考えています」

 両教授の危惧は一致していて「深い地震が起きると上のほうが影響され、海溝に近い浅いところで大地震が起こる恐れがある」(島村特任教授)、「問題は、深いところでプレートがずれると、浅いところでガタンとくる恐れがあること」(木村名誉教授)と、口をそろえる。

 そんな大地震が起きる可能性を、島村特任教授は、

「あす、あさって、とまではいわなくとも、早ければ数か月から数年、10数年の間にはくる可能性がありますね」

 と警鐘を鳴らす。では、レッドゾーンはどこなのか。

■両教授が指摘する危険地帯はココ

「以前から危ない地域としてあげている3・11の北側……北海道や青森あたりと、南側……茨城県から房総半島あたりにかけての危険性は、今までどおり残っています。首都圏直下型地震、南海トラフ大地震も、いつきてもおかしくない。M8クラスの直下型地震がきたら、阪神大震災の20~30倍のエネルギーの揺れが襲い、とんでもない大被害が発生することもある。昔の家はもたない。崩壊するビルも出てくるかもしれません」(島村特任教授)

 もうひとりの木村名誉教授が危険地帯として指摘するのは、次の6つのポイントだ。

「私が予想しているのは北海道東方沖、青森県東方沖、伊豆諸島東方沖、九州の日向灘、奄美大島周辺、台湾周辺。M7.5以上の大地震が、深さ数十キロメートルくらいの浅いところで起こるとみています。中でも日向灘は先日、鹿児島県の口永良部島が噴火しましたし昨年には阿蘇山と桜島も噴火しています。海側から陸側へプレッシャーがかかり噴火しているので、日向灘周辺の地下が動いている可能性があります」

 前述の予想に先月30日の地震が加わり、伊豆諸島沖の危険度もさらに増したと見る。

「3・11と先月30日の地震に挟まれているこの地域は、両側のプレートが動いたプレッシャーでエネルギーがたまっていますから、油断できませんね。私は2007年から2017年の間に、ここでM8.5の地震が起こると予想していますが、その可能性は今ももちろん残っています」

 今は2015年。予想が不運にも的中するとなると、首都圏は今後2年以内に大地震に見舞われる、ことになる。

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取材をもとに本誌作成。矢印はプレートの力の向きを示す。