娘の友達を味方につけた証拠集め

 放置され続けたいじめが、卒業文集から茉奈だけを省くという、卑劣な行為にエスカレートした。夫妻は茉奈に言った。

「学校と闘うよ。これは許しちゃだめだから」

 茉奈は頷いた。翌朝、理恵は担任に電話をした。

「卒業文集の寄せ書きに、茉奈が入っていません。きちんと調査をしてください」

 卒業式や合唱コンクールの打ち上げに、茉奈を省いておきながら、同級生らは茉奈のLINEタイムラインに、《超楽しい》と打ち上げ画像を流した。ディズニーランドの卒業旅行のLINE画像も、茉奈のスマホにどんどん流れてくる。

 学には確信があった。茉奈には見えない形で、茉奈を中傷している『裏チャット』が必ずあるはずだと。

 茉奈の友人で1人、信用できる子がいた。結花(仮名)だ。学はLINEで《いじめについて教えてほしい》とメッセージを送った。学はこれまで、自宅に遊びに来る茉奈の友人には、LINEでつながるように意識してきた。

 LINEを勉強し、茉奈にスマホを与える際にも条件をつけた。

「パパとの間で、ブロックやタイムライン非公開にするならスマホを持たせない」

 結花から画像が送られてきた。画面をキャプチャー機能で写真に撮り、送信してくれたのだ。まず、2人の男子生徒のツイッター画像。居酒屋で数人がピースをしている。

《合唱コン、お疲れさまでした〜。打ち上げはめっちゃ最高でした。それに打ち上げに、13番来なくてめちゃ最高だったー!》

 別の画像は《打ち上げなう》の後、参加者全員の名前を列挙、最後にこうだ。

《13番はいなーい!》

 13番——、それは茉奈の出席番号だ。いじめの決定的証拠だった。