顔にヤケドを負った娘を病院に連れて行かず放置したとして、埼玉県警は11日、同県狭山市のマンションに住む母親で無職・藤本彩香容疑者(22)と同居する内縁の夫で空調設備作業員・大河原優樹容疑者(24)を保護責任者遺棄の疑いで逮捕した。
「スーパーで買い物中、旦那さんが“早くしろ!”と娘さん2人を怒鳴っていたんです。子どもは2人とも怯えていました」(近所の主婦) 死亡が確認されたのは藤本容疑者の次女・羽月ちゃん(3)。県警は、ヤケドの範囲や程度については明らかにしていない。
「病院に連れて行かなかったことは間違いありません」(藤本容疑者)
「病院に連れて行かず、何もしませんでした」(大河原容疑者)
同県警によると、ふたりはこう容疑を認めている。
現場は西武新宿線・新狭山駅から北西に徒歩約5分の静かな住宅街。9日午前11時過ぎ、自宅から119番通報したのは大河原容疑者だった。
「3歳の娘と昨日一緒に寝て、起きたら冷たくなっていた」
ヤケドを負ったのは昨年12月から1月にかけて。遺体は司法解剖されたが、死因はわからない。身体に刻まれた傷はヤケドだけではなかった。
「身体の10数か所に暴行を受けたような傷痕やアザがあった。自宅押し入れにはロープをくくりつける金具が取り付けられていて、羽月ちゃんを閉じ込めていた疑いがある。虐待が激しくなったのは昨年秋ごろ。
両容疑者は無料通信アプリのLINEで“家に帰ったらしよう”などと虐待の打ち合わせをするほどエスカレートしていたようだ。羽月ちゃんのお姉ちゃんは虐待を受けた痕跡がない」(一般紙社会部記者)
事件後、長女(4)は県所沢児童相談所が一時保護した。近隣住民らによると、一家が引っ越してきたのは昨年5月。“夫婦仲”はよさそうに見えたという。しかし、すぐに“事件”を起こす。
「3歳ぐらいの女の子が布団(ブランケット)にくるまって玄関前に出されている」
昨年6月29日午前0時過ぎ、そんな110番通報があり県警狭山署員が出動した。
「外出先で夫婦ゲンカしたらしい。男が怒って先に帰宅し、カギを締めた。母親はカギを持っておらず、羽月ちゃんと一緒に閉め出された。母親は“羽月だけでも中に入れてくれ”と訴え、ブランケットを男に借りた。自分さえいなければ娘は部屋に入れてもらえると思い、男にメールを打ってその場から離れたという説明だった」(捜査関係者)
署員は、羽月ちゃんの顔や手足などに虐待の痕跡がないことを確認し、「夜間に子どもを外に出さないように」と注意して帰ったという。
しかし、1か月もたたない7月19日午後7時半過ぎ、またも通報が……。
「30分くらい前から室内で2~3歳の女の子が泣き続けている」
警官が到着したときには子どもの泣き声はやんでいた。事情を聞くと両容疑者は「子どもがお風呂に入らないので叱ったら泣いた」などと説明したという。このときも虐待の痕跡は見当たらなかった。
2回の110番通報の情報は、警察から児童相談所や狭山市に伝えられることはなかった。羽月ちゃんは生後4か月、1歳6か月、3歳時の乳幼児健診をすべて受けておらず、警察と市で情報共有ができていれば、「最悪の結果は防げたかもしれない」(同市)という。
*後編《女児放置死事件 容疑者宅「毎晩のように部屋からあえぎ声」》に続く。