昨年12月26日に多摩川河口の先の東京湾央で発生した地震。午後10時ごろからわずか1時間強の間に、震源の深さ20キロメートルでM2.7~3.4の地震が5回連続した。
「過去にほとんど地震が起きていないところで集中的にM2・5~3・5規模の地震が起きた場合、おおよそ2か月後に大地震がくることがよくあるんです」
立命館大学・歴史都市防災研究所の高橋学教授はこう語る。つまり、東京湾直下大地震がくる可能性があるという。
問題は、大地震直前のサインとなるM1規模の地震に気づけるかどうか。昨年12月26日に発生したM3前後の東京湾直下地震の揺れは、陸地に到達した湾岸エリア全域でほとんど震度1。局所的に震度2を記録した程度だった。
夜間だったこともあるだろうが、首都圏に住む人の多くが「地震かな?」とも思わなかったはずだ。サインとしては微弱すぎる。
「震度3に達しないと揺れたとは感じにくい。地震計を見ていない限り、たぶん気づかないでしょう。しかし、誰でも日本気象協会のホームページでM1以上の地震は確認できます。もっと小さい地震は防災科学技術研究所の『Hi-net(高感度地震観測網)』で確認できます」
期間は絞り込まれているから、頻繁にチェックすればサインに気づけるという。
首都圏ではほかに、2月5日早朝に神奈川県東部を震源とする深さ26キロメートルのM4.6の地震があり、東京・町田市と神奈川・川崎市で震度4を記録した。高橋教授は「これもフィリピン海プレートの活動が原因」とみている。
こうしてみると、台湾地震を引き起こしたフィリピン海プレートのうごめきは、その前後に日本国内でも噴火や地震を招いていたことになる。
「日本列島には4枚のプレートが接しており、そんなところは世界中探しても日本だけです。さらに、最近になってプレート同士の関係性をめぐる新事実がわかりました」
高橋教授によると、従来の考え方はこうだ。
東日本では大陸側の北米プレートにもぐり込もうとする海側の太平洋プレートでワンセット。西日本では大陸側のユーラシアプレートにもぐり込もうとするフィリピン海プレートでワンセット。
隣り合う太平洋プレートとフィリピン海プレートは、互いに大きな影響は与えていないと思われていた。
「ところが、西之島新島の巨大化などから、太平洋プレートは、北米プレートだけでなくフィリピン海プレートにももぐり込もうとしていることが新たにわかったんです」
'13年11月に海底火山が噴火して海上に出現した東京・小笠原諸島の西之島新島は、溶岩が旧西之島をのみ込んでどんどん大きくなった。
海上保安庁によると、昨年11月現在で面積は約2.63平方キロメートルと東京ドームが56個入る広さ。太平洋プレートがフィリピン海プレートにもぐり込もうとする動きが活発化したためと考えられている。
「噴火当初は、そのうち波に浸食されて消えるんじゃないかといわれていました。東京湾ではいちばん下に太平洋プレートがあって、その上にちょこっとフィリピン海プレートが乗って、さらに北米プレートが乗る3段重ねとわかりました。とんでもない場所に東京の人は住んでいます」
東京湾央でM7クラスの地震が起きた場合、怖いのは津波が発生することだという。
「陸地までの距離が短いので、地震発生の5分後には津波が湾岸エリアを襲うでしょう。地震を感じたら即座に避難してください。地下街では10センチ浸水するだけで、流れに足をとられて、手すりにつかまっても地上に出られなくなります。防災・減災の備えと心構えは大丈夫ですか」