カスタネットのパフォーマンスで人気の芸人・前田けゑさん。また“15億円相続芸人”としても昨年話題を集めた。
「今から9年前、祖母から名古屋に住むおばあちゃんを紹介されたんです。初対面から“養子に来てくれないか”と」
彼女との出会いが、前田けゑさんの運命を変えた。そのころの前田さんは、売れない芸人。
「最初、“養子に入っても、おばあちゃんを養えないよ”と断ったんです。すると、“大丈夫。私はマンションの大家で、自分の生活費は稼げるから”と。祖母にも“私もサポートするから大丈夫!”とか言われちゃって」
放っておけない気持ちもあり、2回目に会ったときに養子に入る意思を伝えたという。
「3回目の食事で結納式。僕の家族とおばあちゃんの関係者が集まって食事会を開き、その足で区役所へ行き、養子縁組の手続きをしました」
あれよあれよと言う間に、祖母の知人の養子となった。
「最初は“月1回、会いに来てくれるだけでいい”と言われたのですが、“もっと来てほしい”となり……」
最終的には、養母が経営するマンションの部屋に住んで財産の管理を任されるまでに。
「このとき“マンション、ビル、駐車場。こんなに財産があるんだ”と知りました」
養子になって5年、養母が突然、息を引き取った。
「おばあちゃんが高熱を出して入院。そこからどんどん体調が悪くなり、そのまま……。急だったので、相続のことは何も考えていませんでした」
相続税は、被相続人の死後、10か月以内に現金で支払わなければならない。
「焦りました。遺産総額はビル、マンション、土地、駐車場など15億円。まず、専門家に頼んで、持っている土地の斜度などを測量し直しました」
斜面の土地は評価が下がり、相続税の減額につながるのだ。
「10億5000万円まで評価が下がり、納税額は4億5500万円となりました」
次に、この莫大な現金をかき集めなければならない。
「現金は2億円ぐらいは相続したのですが全然足りない。そこで、ビルを売ることに。相続税のためとはいえ、入居者さんたちに立ち退いてもらうのはとてもつらかった」
ビルのオーナーが入居者に立ち退きを要請する場合、引っ越し費用や、会社であれば従業員の給与補償も行う。
「入居者さんの引っ越し先が見つからず、そのためにビルも建てました。さらにビルを売ると、収入税という税金がかかり、数千万円の支払い……。お金のやりくりで、もうテンヤワンヤでした」
相続して3年、今はやっと落ち着いてきた。先日、相続診断士の資格も取得。
「相続の仕組みを伝える芸人として活動していきます!」
撮影/坂本利幸