■福島原発2号機は地震で壊れていた!?
事故の収束作業が続く東京電力福島第一原発も、いわゆる老朽原発のひとつだ。1号機の運転開始は1971年3月。それからちょうど40年を迎えるタイミングで東日本大震災が起きた。
“想定外”の津波ですべての電源を失い、原子炉を冷やせなくなったことが大事故につながったと言われているが、これに対する『日本原子力研究開発機構』の上級研究主席を務めた原発研究者・田辺文也さんによる“疑惑”の提起は衝撃だ。
「福島第一原発2号機の格納容器は、地震によって壊れた可能性が高い」
放射能を外に出さないための最後の砦、それが格納容器。核燃料が入った鋼鉄製の原子炉圧力容器を覆っている。地震でも壊れないように、ある程度の揺れまでは耐えられるよう設計、建設されているという。
「ところが2号機は、格納容器が地震の揺れで壊れたか、あるいは劣化してその後の何らかの負荷がかかったことにより破損した可能性が高い」(田辺さん)
津波で電源が失われたあとも、福島第一原発2号機では、原子炉隔離時冷却系という装置を用いて原子炉を冷やし続けていた。2011年3月12日未明、その水源を復水貯蔵タンクから圧力抑制プールに切り替えた。
原子炉に注水すると、原子炉の熱により蒸気が発生。その蒸気で原子炉隔離時冷却系のタービンを回して注水の動力とし、排気蒸気を圧力抑制室に戻すことで循環させていた。
「圧力抑制プールを冷やす機能は津波で失われていましたから、水温がどんどん高くなるにつれ、格納容器の圧力がどんどん高まっていくはず。ところが、想定される圧力の上昇よりずっと低い。それは格納容器に穴が開いていたためとすれば、簡単に説明できます」
それを裏付けるかのように、3月14日の夜9時半ごろ、福島第一原発の正門で毎時3000マイクロシーベルトという高い放射線量が観測された。
「2号機の格納容器に穴が開いていなければ、これだけ高い値が出ることは考えられません。核燃料が溶け落ちるメルトダウンで小さな穴が圧力容器に開いて、そこから放射能が格納容器に漏れ、それがすでに開いていた格納容器の穴から出た。そう考えると素直に理解できます」
■科学的とはいえない論理で激しく否定
これに対し、東電や原子力安全・保安院(当時)は「地震で早期に穴が開いた可能性を、とても科学的とはいえない論理で激しく否定」したため、現在に至るまできちんと検証がなされていない。
「電力会社や保安院が認めたがらないのは、地震で壊れた可能性が否定できないとなると、これまで行ってきた、地震による影響についての評価の信頼性が危うくなるからです。この論証の仕方で大丈夫なのか、と」
福島事故のみならず、地震発生時の重大リスクにつながりかねない疑惑を検証することなく再稼働を進めるのは無責任、と田辺さんは厳しく批判する。