「『ゆとり』は親というよりも、社会の過保護の中で育ってきました。勉強、カリキュラムが薄くされただけではなく、例えば、“競争がかわいそう”と、成績を貼り出さない。“スポーツができない子がかわいそう”と、運動会では手をつないでゴールイン。
あげくの果てには“いじめがかわいそう”と、仲間はずれも絶対に禁止。人の悪口や“KY”なことを言って仲間はずれにされたとしても、先生が“いけません”と」
そう話すのは、ゆとりに関する著書も多数手がけている精神科医の和田秀樹氏。彼らは、1番を目指すことをさせない、競争からかけ離された世代とも言える。
「大人になって、社会に出てからも周りがゆとってくれているのであれば整合性もありますが、大人が勝手に競争やガリ勉に否定的なことを言っておきながら、社会に出てみると競争が待っていた。餌のとり方を教えてもらえずに野に放たれたようなものです。“全然違うじゃないか”というのは、彼らの本音としてはあると思います」(和田氏)
■ゆとりなんて言葉でくくらないでください
ひょんなことから客引きの道上まりぶ(柳楽優弥)に騙され、ボッタくられた坂間と山路。偶然にも2人の相談相手“レンタルおじさん”こと麻生(吉田鋼太郎)は、道上の父親だった。彼もまたゆとりだと麻生から知らされた坂間。
《クズでしょ。オレも、山ちゃんも。アンタの息子も。だけどみんな違う。みんなクズだけど、それぞれ違うクズなんだから。ゆとりなんて言葉でくくらないでください》
右にならえの世代とも言われるが、やはり自分は自分、一緒くたにはされたくない。
道上の自宅を訪れた坂間と山路。妻子ある身ながら医者か弁護士を目指して、11年間浪人中。一方、大学や会社を選んだ動機を「入れそうなとこ。内定もらえそうなところ」と、無難な坂間に道上は言う。
《すげえな。入れそうな大学入って、入れそうな会社入って辞めずに続けてんだよ。すごくね?(略)ゲームでいったらレベルアップしないで何回も何回も同じこと繰り返してるわけじゃん。余裕でクリアできるステージを》
一方、坂間の妹ゆとり(島崎遥香)は就職活動がうまくいかずインターンシップで通っていた職場に対しても「会社が悪い」と不満を漏らす。
《もう就職すんな。お前が気に入る会社なんてどこにもねえし、お前を気に入る会社もねえからだよ》
妹に説教する坂間は、自分がいま会社で置かれている境遇を、自分に言い聞かせるように次第にヒートアップ。