■“こんなところにいる女はクズだ”と罵られた

 笑顔がチャーミングな前田かすみさん(22=仮名)は首都圏の国立大学を卒業し、医療系の仕事に就いている。実家に余裕はなく、大学時代の生活費は無利子の奨学金でまかなった。

「返済総額600万円です。金額を言うとタメ息が出ちゃいます」

 在学当時、20歳前後で百万円単位の借金がどんどん膨らんでいくのが怖かった。奨学金が通帳に振り込まれるのを確認するたび、少しでも稼ぎたいと思った。「時給4000円」は魅力的な条件だった。

「いわゆる“おっぱいパブ”でした。安っぽいドレスが支給されて、でも上半身はすぐ全部脱いじゃうんですけどね。店内の照明が薄暗くなったら客のひざの上にまたがり、5分間、上半身は何をされてもいいことになっていました」

 怖い客も多かった。

「酔っ払いによく絡まれました。おしぼりで顔をぶたれたり、“こんなところにいる女はクズだ”と罵られたこともあります。夜の仕事に興味はあったけれど、奨学金返済がなければガールズバーくらいにしていたかもしれない」

 完済まで10年以上かかる。返済が遅れたことはない。

 今春、音楽系の大学を卒業した相川千波さん(22=仮名)はミュージシャンとして一歩を踏み出した。カフェでアルバイトしながら営業ライブなどをこなし、どうにか手取り15万円程度。総額240万円以上の有利子奨学金の返済が秋から始まる。

「音楽がやりたくて大学に入ったのに、バイトで練習時間を削られるのがイヤで、カッツカツの生活を送っていました。1食200~300円でおさめたくて、毎日モヤシばかり食べていました。栄養失調でよく体調を崩しました」

 与野党が給付型奨学金の創設に向けて動いているニュースには声を荒らげた。

「どうせ、受給できるのは、ひと握りの中のひと握りですよ。そもそも財源は税金でしょ? ウチらのときにも出せって言いたいですよ!」