■理事長自身はアルバイトをして家族を養う
つばめ塾の入塾条件のひとつに“経済的に苦しいと感じていること”という項目がある。住民票と課税、非課税証明書を提出する必要はあるが、両親の収入制限はない。収入がそこそこあっても、多子のために教育費の捻出が困難というケースもあるからだ。
そんな家庭に、小宮理事長は寄り添う。
「僕はつばめ塾を通して、“学習面においては必ず子どもたちを手助けするよ”“お金のあるなしが教育を左右するのは違うんだよ”という社会にするための種まきをしたいんです。まき続け、育てたい」
塾設立当初は映像制作会社に勤務していたが、半年後には辞め、塾に専念。現在は市内に5つの教室を運営し、年末年始以外、年間361日、生徒を受け入れている教室もある。数学と英語がメインで理科、社会、国語は休み期間に集中講習をする。
「つばめ塾の運営は、ほぼ100%寄付金で賄われています。小口の方ですと、毎月1000円~数千円。中には毎月10万円ほどくださる方もいます。場所代や諸経費を合わせると、つばめ塾の必要経費は1か月10万円強くらい」
自身の生活はというと、「私自身は皿洗いや弁当配達、コンビニエンスストアのアルバイト、高校の非常勤講師もしています。妻と3人の息子を食わしていかなければなりませんからね」と苦笑いする。
■無料塾は住みやすい社会にするための“投資”
苦しいときに義父母に助けられたりしたが、つばめ塾の理念に賛同し、無報酬で教えてくれる約60人の講師の存在が大きい。
「社会人と学生が半々、男女比は6:4くらい。報酬はゼロで、交通費すらお支払いしていません」(小宮理事長)
それでも4割は市外から通ってくれるという熱心さだ。
6月から教え始めたという福祉関連の学部に所属する大学3年の田中梓さん(20)は、「授業がない水曜日に、藤沢から通ってきています。休みを使って交通費をかけてきても、苦じゃないです」と、充実感いっぱい。
講師歴2年の公務員、瀬戸和史さん(29)は、「生徒の理解度がだんだん高まっているのがわかり楽しい」と週3回、3教室をかけ持ちして教えている。
「“困っている子のために”とかではなく“投資”だと思っています。今後、貧困格差が広がっていったら、子どもたちが働き盛りの年齢になったときに、日本全体の力が下がります。住みやすい社会にするために、今できることを」
そんな講師の思いを生徒とマッチングさせるために、小宮理事長は講師にこう望む。
「“生徒に寄り添ってあげる”ことだけです。隣で生徒が課題をひとつひとつこなしていくのを生徒の立場で励ましてあげられることが重要です」