スーパー高齢ラッコ計画
国内のラッコ13頭は、徐々に高齢化が進んでいる。寿命は野生で15年、飼育下で20年程度だという。
『海遊館』(大阪)に暮らすパタ(20歳)は人間でいうと80歳。飼育担当の地本和史さんは、
「ラッコの妊娠適齢期は15歳。ギリギリの16歳のとき、オスと同じ水槽で過ごさせましたが、馴れ合いになってしまって。半年ごとに少し別居させるなどの工夫はしましたが、ダメでした。今は高齢なので、とにかく元気に長生きしてほしい」
国内最高齢でこの世を去ったポテト(享年25)をそばで見守ってきた前出の石原さんは、高齢ラッコの飼育にある決意を抱いている。
「ポテトは筋力低下で、晩年は水深2メートルも潜れなかった。本当にヨボヨボで白内障も発症しました。でも、過保護な飼育環境は寝たきりの入院と同じ。
90歳でも元気に走るスーパーおばあちゃんっていますよね? ラッコも同様に高齢でも自分の意思で生きられるように飼育したい」
エサの魚肉は半解凍の固いまま与え、前足と歯のトレーニング。
さらに、飼育員が水槽壁面の上のほうを狙ってエサを投げつけると、勢いよく水中に潜って助走をつけ、ジャンプ! 簡単には取れないところにエサを置けば頭で考え、身体を動かす癖が身につくのだという。
「国内の水族館で今、妊娠適齢期のラッコはオス3頭、メス4頭。でも、まずは高齢化したラッコも含め最良の環境で飼育することが最優先です。ラッコはデリケートな生き物で、繁殖のための引っ越しが命取りになることもあります。不自然な試みはせず、妊娠の可能性を探っていきたい」