反社会性パーソナリティー障害

 前出・碓井教授は、次のように容疑者の行動を分析する。

「第1に妄想性障害であること。妄想性障害は社会現象とリンクしてさまざまな妄想を引き起こすんです。彼はテロと結びつけていた可能性がある。一般的に妄想性障害の人はクレームの電話ぐらいで終わるのですが、彼は反社会性パーソナリティー障害であると診断されていることも関係します」(前出・碓井教授)

 反社会性パーソナリティー障害は社会のルールを守れず、良心の呵責を感じにくいため、犯罪に手を染めやすいと碓井教授は解説する。

「この障害は札つきのワルをイメージしがちですが、米国では国会議員にまでなりそうな好青年が反社会性パーソナリティー障害であり婦女連続殺人の犯人でした。他人や自分が傷つくことに鈍感なんです。だからこそ教員を目指すと公言していたにもかかわらず障がい者をけなす言葉が出てきたのかもしれませんね」

 さらに彼の精神状態についても言及する。

「彼は躁病という診断もされていますが、妄想がすべていいアイデアに感じられ、行動に移した。自分の考えは正しく、政治家でも友人でも話せば理解してくれると。入れ墨にせよ手紙の依頼にせよ、彼が危険な領域に足を踏み込んでいる兆候はいくつも見られます」

 あらかじめ予告されていたにもかかわらず、事件は起きてしまった。予告もなく犯行に及ぶかもしれない第2、第3の植松容疑者を止める有効な手立てはあるのだろうか。