「“開運飯”を本格的に始めたのは、藤井隆さんがきっかけでした」

──では、“開運飯”のスタート地点にたどり着いたのはいつごろですか?

「今から7、8年前かな? 藤井隆さんが舞台の公演中にヒザの半月板を痛めたことがあったんです。私、ケガをしたら悪い所を食べたらいい、つまりは脚を痛めたとしたら、鶏なんかの脚部分を食べればいい、なんて民間伝承を思い出して。

 それで、鶏軟骨のつくねを作って、藤井さんのお見舞いに行ったんです。そうしたら話を聞いた藤井さんがとても喜んでくれて、『もっとたくさんの人に料理を作ってあげて、もっと広めたらいい』と言われました。そのときは『ええっ』と驚きました。

 何しろ料理は、好きという感情だけでやっていたことなので……後輩から、ウチでご飯を食べると元気になるとは言われてはいたんですけどね。でも色々考えて、その藤井さんの言葉を胸に、“開運”“パワーフード”というものを、勉強するようになりました」

撮影/斎藤周造
撮影/斎藤周造
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──勉強したのは、薬膳ですか?

「そうですね。昔、皇帝に何人もお医者さんがついていて、病気を治す医者だけではなく、防ぐお医者さん・運気や体調を調節する食医という人がいたんですって。食べる相手のことを考えて食材を選べば、それはもう薬膳なんです。

 実は民間伝承と五行説って重なることが多くて。図書館などで勉強したのですが、答え合わせをしている気分になりました」

──理論だけお聞きすると、難しい料理が出てくるのかなと感じてしまいます。

「いえいえ、私の料理の決め事は、旬のものを使うっていうのと、あまり季節外れのものは使わないっていうことくらい。あとはなるべくシンプルに。酒・醤油・みりん・砂糖だけで作れるようにしています。その範囲内での、“開運飯”なんですよ」

──普段から芸人さんの楽屋にもお弁当を差し入れされているそうですね。

「古本街で有名な東京の神保町に、神保町花月っていう吉本の劇場があるんです。そこは若手がお芝居やる劇場なんですけど、若い子たちって深夜の稽古中にお腹がすくんです。

 でもロクなものを食べていない子が多くて。お菓子ならまだいいんですけど、衝撃的なことにチキンラーメンをそのまま割って食べていたりして! もう「止めて〜!」ってなってしまって、おにぎりでもあればみんな喜ぶかなと思って、持っていくようになりました。

 トレンディエンジェルも、このお弁当を食べていましたね。まだデビューして2年目、3年目の、一番下っ端のときだったんじゃないかなあ。

 実は芸人って、先輩がおごってくれるから、お寿司や焼肉は、食べられる機会が案外多いんです。でも普通にカボチャの煮物とか、ひじきの煮物とか、そういうものは食べられないんですよね。だから『こういう普通のご飯が嬉しい』ってみんな言っていました」