鉄道業界の隠語に“マグロ”というのがある。いわゆる人身事故のことだ。

 現在では、列車衝突のような鉄道事故は稀だが、人身事故は日常茶飯事で、鉄道で亡くなる人は後を絶たない。

 盲導犬を連れた会社員がホームから転落し、進入してきた銀座線にはねられて死亡(2016年8月15日発生)。人身事故には、視覚障害者が被害者になるケースも少なくない。この事故が示すように、特に視覚障害者にとって、鉄道は必ずしも安全ではないのだ。

 一方で、人身事故で圧倒的に多いのは飛び込み自殺である。自殺の場合、鉄道会社は完全に“被害者”という立場で、鉄道マンたちは忌々しい思いを込めて“マグロ”と呼ぶ。

「どうせ死ぬなら別の場所でやってくれよ」

 これが彼らの本音だ。