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「子どもをつい怒鳴ってしまうのは、しつけ? 虐待?」─そんな悩みを抱える母親が増えている。折しも虐待件数は上昇しており、'90年に1000件超だった児童相談所への児童虐待の相談件数は'14年には約9万件に。この24年間で、約90倍になっている計算だ。

 そして、虐待事件で多くの親から出るのは「しつけのため」という言葉。

 しかし、子どもの虐待に詳しい山梨県立大学人間福祉学部教授の西澤哲さんは、「しつけと虐待はまったく別。イライラして怒鳴るなど、大人が子どもを自分の感情のはけ口に利用する行為は虐待です」と話す。

 とはいえ、育児に追われる日々の中、ついイライラしてしまったときはどうすればよいのか。「まずはお母さん自身を満たしてあげることも必要」と話すのは、アドラー心理学に基づく子育て講座を開く原田綾子さんだ。

 虐待としつけの定義から、子どもへの向き合い方までを、2人の専門家の言葉を交えながら解説する。

虐待はしつけの延長ではない

 子育ての中で気がかりな、「虐待としつけの境界線」。最近、もっとも話題になったのは、'16年5月、北海道で起きた男児置き去り事件だろう。いたずらをした小学校2年の男児が父親により山に置き去りにされて行方不明となり、6日後に保護された。この事件をめぐっては、「やりすぎ」と非難する声の一方、「気持ちはわかる」との親のつぶやきも。

 一方で同4月、父親が2歳の長男を衣装ケースに閉じ込め死亡させた事件や、'13年に両親が3歳の次男をうさぎ用ケージに監禁し、死に至らしめた事件でも、親は「しつけのため」と語った。