思いやり予算とは、日本が負担する在日米軍駐留費のこと。日米両政府は'16〜'20年度の5年総額約9465億円で合意している。さらに日本の負担割合は、在韓米軍に対する韓国のそれよりもはるかに大きいという。

 カネを払っていないとする指摘はあたらないし、もし100%負担が実現したら米軍がジャブジャブ使いまくることも考えられる。しかし、トランプ氏が万が一にでも強行手段に出たとしたら、「最悪のシナリオが待ち構えている」(熊谷氏)という。

「もし国内の在日米軍がすべて引き揚げたら、中国はすぐ尖閣諸島の乗っ取りに動くと思う。その次に狙うのは沖縄でしょう。中国は“琉球列島(沖縄)は清国の勢力圏だった”と本気で思っていますから。現時点の防衛力と防衛予算では中国には太刀打ちできません」と熊谷氏。

 米軍のバックアップがなくなれば、北朝鮮も乱暴なことをしかねない。アジアのことはアジアで……と言われてもうまくいくはずがなく、微妙な均衡が崩れてアジア圏に混乱が生じるおそれがある。

日本の景気にも影響

 トランプ氏は経済面でも好き勝手しようとしている。「大統領就任当日に環太平洋経済連携協定(TPP)を離脱する」と宣言しており、もはや発効は絶望的ともいえる。

 ジャーナリストの須田慎一郎氏は「米国にとっては外国産自動車が入ってこなくなる反面、農作物を外国に売れなくなります」と話す。

「TPPとは、物やサービスにかかる関税をお互い全部取っ払いましょうという決め事です。トラブルが起きたときは共通のルールで対処します。

 米国の主要農作物は小麦、大豆、トウモロコシなど。あるいは畜産品の牛肉、豚肉です。日本から自動車が入ってくるかわりに農作物を高く買ってもらうことができる。だから米国の農家はTPPをぜひやりたい。全米最大の農作地であるアイオワ州ではトランプ氏は負けています」(須田氏)