“幸村”にたどりつくまで
誰もが知っていて人気のある“幸村”という名前をあえて使わず、史実に忠実に信繁で始めた『真田丸』。実は、ここぞというタイミングで幸村と名乗らせることは決めていたという。
「家康を討つために、大坂へ入るタイミングで改名させようと。スタッフでいろいろな案を出し合いましたが、最終的にどうやって名前を変えるのかは三谷(幸喜)さんのアイデア。僕たちも台本を読むまで知らなかったんです」
“武田” “沼田”など自身にゆかりのある言葉を紙に書き出し、ひと文字ひと文字に切り分け、壺に入れた紙を息子・大助に引かせた。あらかじめ決めていた父・昌幸(草刈正雄)の“幸”と、息子の引いた九度山村の“村”からとって幸村に。
「台本を読んだときは三谷さんらしいな、と思いましたね。今の九度山町の方々はめちゃくちゃ喜んでいますよ。“100年後には、これが史実になるんじゃないか”ってみなさんで話しているそうです(笑)」
オープニングのイメージはあの映画
『真田丸』のタイトルが砕け散り六文銭をバックに、有働由美子アナが前回までのあらすじをナレーションで語る、心をつかむオープニング。
「あの部分、僕たちは“スターウォーズ”と呼んでいるんです」
SF映画の金字塔的作品の“はるか昔、銀河系のどこかで……”とナレーションとともに文字が動いていく、物語のイントロダクション。
「大河の放送時間は45分間ですが、テーマ曲と最後の紀行をはずすとぴったり40分なんです。まずナレーションでわかりやすく解説しようと。それを狙って六文銭に文字を流すというアイデアが生まれました」
基本的にはタイトル前には演技シーンはなし。いきなりテーマ曲で始まるのは、往年の大河ドラマを意識しているという。
「物語の流れを切らずに40分間、集中して見ていただきたいという三谷さんの強い思いもありました」
堺が輝かせたバイプレーヤー
今回は主要キャスト以外でも、存在感が強いキャラクターたちに注目が集まった。
「反響がすごかったのは、前半でいえば室賀正武(西村雅彦)と出浦昌相(寺島進)ですね。室賀のご子孫の方からもたくさん手紙をいただきましたし、“だまれ小童(こわっぱ)!”があんなにも有名になるとは思っていませんでした(笑)。あとは小山田茂誠(高木渉)や、新しい解釈で描いた豊臣秀次(新納慎也)とか。新納さんの演技もハマって、視聴者の方には“秀次ロス”にもなっていただきましたしね(笑)」
このようにメインキャスト以外に注目が集まるのは、主演・堺の演じ方にもよるところがある、と屋敷CPは語る。
「堺さんは、自分の芝居だけを主張せず相手のお芝居をちゃんと受けるから、周りの人たちのお芝居も目立つんですよ。他局ですが『半沢直樹』からも注目された方たちがたくさん出てきましたよね」
舞台俳優として名前が通っていた石丸幹二や、堺が演じる半沢直樹の同期を演じた滝藤賢一、『真田丸』でも大谷刑部を演じた片岡愛之助らが一気にブレイクした。そこには主役・堺の力が大きいという。
「相手がどう仕掛けてきても、そこに合わせることができる、次元の違うフレキシビリティーを持っている人です」