カジノをめぐっては、数兆円の経済効果が試算されている。地方活性化の起爆剤として期待されるほか、既存のギャンブルとは異なるイメージがある。ドレスアップした紳士淑女が集うエンターテイメント空間という印象である。
弁護士などで構成する『全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会』で代表を務める元日弁連副会長の新里宏二弁護士は「賭博という点では“丁半博打”と変わりません」として次のように話す。
「韓国17か所で唯一、自国民が入れるカジノ『江原ランド』に行きました。併設のホテルではプロモーションビデオが流れていて、欧米系とみられる男性が白いタキシードを着てカジノに向かう。次のシーンでは、赤いドレスの女性がワイングラスを傾けていました。
実際に平日の夕方に行ってみると、若い人から高齢者までいてほぼ満員。タキシードは1人もいませんでした。ジャージ姿のお客さんが相当数いました。シンガポールのカジノにも行きましたが、やはりタキシードはいませんでした」(新里弁護士)
吸い上げたお金はどこへ?
日本に創設された場合、日本人の入場を禁止することはないとみている。
「日本人抜きでは収益が上がらず、海外からの投資が見込めませんから。1兆円投資しても5年以内に回収するはずです。外国人観光客がお金を落としていったらありがたいというような甘い感覚ではありません。
そもそも外国人観光客に損をさせるのが日本の『お・も・て・な・し』ですか。たしかに雇用は生まれ一部の建設会社やゲーム機器の会社は儲かるでしょうが、多くの日本人が損をし売り上げの約30〜35%は海外資本に吸い上げられます」(新里弁護士)
暴力団の資金源になるのではないかという指摘もある。
「シンガポールのカジノには『ジャンケット』と呼ばれる業者がいます。チャーター便を手配したり、ホテルを押さえてくれ、金も貸してくれる。最も重要な仕事は金の回収です。返済できなければ“何を寝ぼけたことを言ってんだ”と迫る。暴力団とのつながりもできやすい」(新里弁護士)
ヤミ金融が息を吹き返すおそれもあるという。
「韓国・江原ランドの最寄り駅の電話ボックスには、名刺大のヤミ金融のチラシがびっしり貼られていました。『サチェ(私金融)』と呼ばれています。シンガポールのヤミ金は『ローンシャーク』といいます。ギャンブルでスッた人などを狙って金を貸すのがヤミ金ですから、そこに暴力団が絡んでくる可能性があります」(新里弁護士)