「これって自立する必要ある?」
これだけ聞くと、単なるツッコミのように思えるが、実はこのひと言にも深い意味がある。収録後、加藤さん本人が言っていた。
「視聴者がテレビの前で思っていることを、代わりに僕が言ったほうがいいと思うんですよ」
自分の見解を述べるのではなく、視聴者の声を代弁することで、共感を高めていく。そのために、家にいるとき、子供がテレビを観ながら何と言っているかを常に意識しているそうだ。
コメントだけでなくスタッフにも配慮
加藤さんはスタッフにも配慮する。『この差~』の番組内容が、企画本来の主旨からズレ、悪い言い方をすると視聴者にひどく媚びた回があった。番組の継続が判断される時期だったので、何がなんでも視聴率が欲しかった。それでそういう内容になったわけだが、加藤さんは「これは違うんじゃないか」と思ったようだ。だが、それをストレートには言わない。
「これって✕✕さんがホントにやりたいことなの?」
なんとも上手い言い方だ。頭ごなしに「違う」とダメ出しされたら、スタッフも気を悪くする。しかしこんなふうに言われたら、番組のことを心配してくれていることが伝わってくる。そんな言い方をする出演者はなかなかいない。
そこで今回、加藤浩次さんに「配慮のかたまり賞」を勝手に差し上げ、勝手に表彰します。
ただしこの賞はあくまで司会者としての加藤浩次さんに贈るもので、笑いの現場に登場する狂犬・加藤浩次はその対象にはならないことを申し添えておきます。
【プロフィール】
◎山名宏和(やまな・ひろかず)
古舘プロジェクト所属。『行列のできる法律相談所』『ダウンタウンDX』『世界何だコレ!?ミステリー』といったバラエティー番組から、『ガイアの夜明け』『未来世紀ジパング』といった経済番組まで、よく言えば幅広く、よく言わなければ節操なく、放送作家として活動中。