被害者が実際に法廷で証言せずとも、安全に生きることができる法を
そしてこの17年という求刑も、被害者が実際に法廷で証言したからこそ出せたものですよね。
岩沙弁護士がおっしゃるには、今回の意見陳述は、被害者の心情を中心に意見する「被害者等の意見陳述」(刑事訴訟法292条の2)を利用しているそうです。この法律では、被害者自らが希望して申し出ない限り法廷で陳述を行えないとのことですが、そうでもしなければ17年という厳しい求刑は出なかったわけです。
被害者の前に、ついたてはあったものの、目の前には被告がいるわけです。そのうえ被告は、怒鳴り声を上げ退廷を命じられたといいますから、被害者の恐怖は相当なものだったはず。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)の可能性すらある被害者が被告と同じ空間に身を置くことで、如何に大きな恐怖に苛まれるのかということくらい、私たちでも容易に想像がつくわけですから、専門家の方たちは当然あらかじめ想定できたことですよね。
被害者がここまでせずとも、“安全に生きることができる”という安心感を抱くことのできる判決が下される。そうした司法、裁判のプロセスが一日も早く実現されることを願うばかりです。
<構成・文/岸沙織 取材協力:アディーレ法律事務所・岩沙好幸(いわさ・よしゆき)弁護士>