冨田さんに、被告と向き合わなければならない憂うつな場面が再び訪れるかもしれない。裁判で岩崎被告は調書が読み上げられている最中に笑ったという。さらに冨田さんに罵声も浴びせかけた。
「あれは、法廷の場を借りたストーキング行為ですよ」
小早川さんはそう断じる。
「衝立で隔てられているとはいえ、事件後初めて、近くで生の声が聞けたので、脳に報酬がもたらされたと思います。ストーキングというのは反応を欲しがる禁断症状のようなものです。刺激が与えられれば出現します。本人がいかに反省していると語っても、冨田さんへの欲求は続いているし、今後も続くと私は見ます」
高裁、最高裁と判決が確定するまでは、岩崎被告は収監されない。また法廷で冨田さんに会えると思ったのか。
「犯人は何ひとつ傷ついていないのに、私だけが身体にも心にもこんなに多くの傷を負って、これから先も痛みに耐えて生きていかなければならないと思うと悔しいし許せません」
冨田さんは裁判で、加害者と被害者の苦痛の違いを訴えた。
加えて、いずれは出所するという将来への不安。また自分に危害を加えるかもしれないという恐怖もぬぐえない。
前出・小早川さんは、
「ストーカーがなぜ許せないかというと、肉体的な被害もそうですが、引っ越しをしたり職を変えたり、心に大きな傷を負ったり、被害者が自分の人生を歩めなくなってしまうからです」
と言葉に力を込める。そして冨田さんには、
「加害者に負けない人生を送ってほしい。やりたかったことをやる、住みたかったところに住む。それには、周囲の人の協力が必要です。被害者が望む人生を、みんなで作ってあげないといけない。今はとても苦しい時期だと思いますが、くじけずに自分の人生を送ってほしい」
冨田さんが元の生活を取り戻すことを願う。