仕事を忘れホッとひと息つける場所

『おみやさん』で、行きつけの店という設定で撮影が行われた京都の料理店『辰樹』には、プライベートでも通っていたという。

「最初は'04年でした。6年前、東日本大震災があった日に共演している櫻井淳子さんと来てくださったのが最後だったかな。なんでも美味しいと言って食べてくださって、よく、のどぐろの焼いたのを召し上がっていました。ビールと焼酎を飲んでいましたが、深酒することはなかったですね。健康には気をつけていらっしゃったようなんですがね……」(女将の岡本依子さん)

 自宅のほど近くにも、10年以上通っていた店がある。ラーメン店の『めでた屋』だ。

「毎週欠かさず来てました。実はうちの名物は『チャーシューメン』なんですが、渡瀬さんは毎回決まって650円のシンプルな『支那そば』。あっさりしているから毎週食べても飽きなかったみたいです」(店主の渡邊正樹さん)

 いつも運転手やマネージャーと、午前11時30分の開店とともに来店して、10分ほどでサッと食べて帰っていったという。

「ほかのお客さんにバレないようにするためだったんでしょうかね。たまに奥さんと2人のお子さんといらっしゃるときもあって、娘さんが成人して名古屋に行かれた後も帰京の際にはよく来ていただきました。本当に残念ですね……」(前出・渡邊さん)

 多忙な渡瀬さんにとってこのお店が、仕事を忘れホッとひと息つける場所だったのかもしれない。優しい素顔を隠した渡瀬さんは“強い男”のままで旅立っていった。