4月6日から衆院本会議で審議入りした「共謀罪」法案。共謀罪を取り締まる際、日常的な監視が必要になるのは、先の記事「PTAママや会社も犯罪集団に!? 共謀罪でスマホやSNSまで監視され放題」で述べたとおり。そこへひと役買いそうな仕組みがすでに日本中、24時間体制で張り巡らされている。それが監視カメラだ。
「歌舞伎町や渋谷など繁華街を中心に警視庁が管理する195台のほか、警察庁は全国に1373台の直轄カメラを設置しています。主要道路にある自動車ナンバー読み取り装置『Nシステム』は1000台以上、民間レベルでも商店街やコンビニ、ATMと、総数は計測不能と言われるほど膨大です」
とは上智大学教授で『監視社会を拒否する会』共同代表の田島泰彦教授。
さらに最近は、カメラで撮影して記録するだけでなく、そのデータをもとにあらかじめ登録された人物のデータと照合、特定する『顔認証システム』の導入も進められている。
「カメラの映像と警察が持っているデータが照合され、過去に犯罪歴がある人物などと結びつけてチェック、もしヒットしたら、ただちに警察官が現場へ赴くというわけです。しかし肝心のデータが、本当に犯罪者だけに限定されているのかどうかは不明。政府や警察に批判的な人たちまで対象を広げ、動向をチェックしたり抑圧したりする手段として使われかねない」
実際に岐阜県大垣市で、風力発電の建設に反対する住民が警察の監視対象にされていたことが’14年、明るみに。
「人々の自由な活動に踏み込んで、よからぬ形で規制や抑制を加えていこうとする動きは、2020年の東京五輪を前に、より強まっています」
“自由”と“安全”が天秤にかけられる社会。監視網の発達によって、肝心の犯罪は減ったのだろうか?
田島教授は「これまでの社会科学的なデータからは、犯罪が減ったことを示す明確な証拠は見られません」とキッパリ。「特にテロの場合、強固な政治信条を持つ人物にとって、カメラに映るからどうという話ではない。それよりも現状に共謀罪が加わることで、さらに市民の自由や権利がないがしろにされ、情報が乱用されていく危険性のほうが大きいと私は考えます」