【近畿】あの有名な珍名さんたちは大阪在住

■三重──東西の境目は雲出川

 ダントツに多いのが伊藤。“伊勢の藤原”に由来する名字なので、さすがお膝元だ。また伊勢神宮関連の名字も見受けられる。

「内宮は荒木田、外宮は度会(わたらい)が代々神官を務めてきました」

 名字の東西の境目は、日本海側は新潟と富山の県境。しかし太平洋側は三重の雲出川付近。よって、県内には東西の名字が混在している。三重独特の名字は水谷、服部。稲垣、出口も多い。

■滋賀──佐々木発祥の地

 田中、山本、中村がトップ3で、近畿地方の典型的な分布といえる。県6位に中川、7位にがほぼ同数で並び、辻、奥村、西川がトップ20入り。藤居中居など、“井”ではなく“居”を用いた名字も多い。

「滋賀を代表する名字は、佐々木。近江八幡市安土町付近にあった佐々木荘がルーツ。この1か所から全国に広がっていきました」

 珍しい名字には有馬殿(ありまでん)、一円(いちえん)、皇(すめらぎ)、比売宮(ひめみや)、六(むつ)など。

■京都──〇条、〇小路、〇大路

 実数はさておき、京都を代表する名字は、やはり公家のもの。京都は格子状に街路が広がり、東西の方向を“条”、南北の方向を“大路”“小路”と呼ぶ。

一条から九条まですべてあります。小路がつくのは油小路(あぶらのこうじ)、綾小路(あやのこうじ)、梅小路(うめこうじ)、押小路(おしこうじ)、北小路(きたこうじ)、錦小路(にしきのこうじ)、万里小路(までのこうじ)の7家。大路がつく公家は、西大路(にしおおじ)だけ」

 ただし、公家の中でもこれらは少数派。大多数の公家は地名から名字をつけた。

■奈良──米田さんNo.1県

 方位方角に由来する名字が多い。東、西、南などがつく名字は紀伊半島一帯に見られるが、奈良には北西を意味する“乾”(いぬい)や南西を表す“辰己”(たつみ/巽、辰巳なども)もあるのが特徴。

 また、米田も多い。人口比で見ると、米田率がいちばん高い県。全国的には圧倒的に“よねだ”と読むが、奈良中南部では“こめだ”が主流だ。県のランキングでは68位が米田(よねだ)、71位が米田(こめだ)と、かなりの僅差。

■大阪──西日本の縮図

 田中、山本がツートップ。ただ、大阪は西日本の各地から人が集まっているため、独自性はあまりない。むしろ“西日本の縮図”といえる。もちろん、地域によっては特徴も。泉佐野市や岸和田市には、日根野谷(ひねのや)、佐野川谷(さのがわや)、小間物谷(こまものや)など、“漢字3、4文字+谷”という名字が多い。

「有名な珍名字は、泉大津市の鼻毛(はなげ)さん。東京(とうきょう)さんも、大阪在住です」

■兵庫──藤原さん、日本一

 大阪と同じく、田中山本がダントツに多い。特徴は、藤原が県5位なこと。藤原は兵庫から岡山にかけて集中していて、実数では兵庫が日本一なのだ。県ランキングには人口の多い阪神地区の名字が並ぶ中で、丹波地区に集中する足立が34位にランクイン。

「珍しい名字は紡車(つむ)。さらには洪水(こうずい)、国宝(こくほう)、碁盤(ごばん)、栗花落(つゆり)、力士(りきし)などがあります」

■和歌山──小鳥遊さんはここに!

 県トップ50で特徴的なのは玉置、榎本、中谷、辻本など。ただし玉置以外は近県にも多く見られる。

「和歌山では“たまき”がほとんどですが、和歌山を離れるにつれ“たまおき”が増えていきます」

 湯川、岩橋、上野山、貴志(きし)、雑貨(さいか)なども和歌山らしい名字。また那智勝浦町の小鳥遊(たかなし)は珍名字で有名。鷹がいなければ小鳥は遊んでも平気……まるで言葉遊び。