LGBT。ビジネスの世界でも、ここ数年間で目にする機会が急に増えた言葉である。LGBTとは、レズビアン(Lesbian:女性の同性愛者)、ゲイ(Gay:男性の同性愛者)、バイセクシュアル(Bisexual:両性愛者)、トランスジェンダー(Transgender:生物的性別と自覚的性別の不一致者)の頭文字を並べた造語で、彼らを中心に「性的マイノリティ」と括られることも多い。

 なお、LGBT以外の性的マイノリティも存在するので、厳密には「LGBT⊂性的マイノリティ」の関係にある別概念だが、当記事ではLGBT層と総称したい。

 ビジネスチャンスに鼻が利く電通や博報堂も相次いで関連する組織を設立したり、調査結果を発表したりするなど今や、LGBT層に向けられる企業の視線は熱い。

LGBT層の消費総額は推計6兆円規模!

 電通の調査によるとLGBT層の人口割合は既に約一割で、血液のAB型比率とほぼ同水準だ。また、彼らの消費総額は推計6兆円にも達しており、デパート業界や広告業界とほぼ同じ規模感で、品目別では特に家電、インテリア、化粧品、カルチャー活動の消費が活発だと報告されている。

 しかも最近の「おねえタレント」の活躍などを受けてか、その社会的な存在感は増すばかりで、もはやマイノリティの域をとうに超えているようにも思える。

 人口減少・高齢化・貧困化などで大変に厳しい国内市場に直面している企業が、彼らを新しい有望な消費ターゲットとして捉えたくなるのも、至極当然な流れだ。

「有望消費者としてLGBT層を狙え!」と息巻く企業が増えても不思議ではない。

 そして、そんな風潮の追い風になっているのが、ビジネス誌などにときおり掲載される同性愛者富裕層説、すなわち「同性愛者に高学歴・高所得者が多い」という通説ではなかろうか。

 確かに今の世間に、「お金持ちそうな同性愛者が目立っている」と漠然と感じる人が多いことは否定できまい。バラエティ番組に頻繁に出演したり豪華な自宅を紹介したりするいわゆる「おねえタレント」たちが、富裕同性愛者の判りやすいアイコンとして機能している。

 また、バイセクシュアルだと公表しているレディ・ガガをはじめとして、LGBT層であることを公言している著名な芸能人やスポーツ選手、IT系や美容系のカリスマ経営者などは枚挙に暇がない。

 加えて、アップル社CEOのティム・クック氏が同性愛者だとカミングアウトした影響も小さくないだろう。彼は同性愛を公言した最初の全米主要500社トップとして歴史に名を刻んだが、今後は同様の大物経営者が続出しても誰も驚くまい。

 事実、2013年米国版国勢調査によると、同性婚世帯の平均年収は一般(異性婚)世帯の約2倍にも達していたという。