メガバンク3行の貸付残高は約1.6兆円にのぼる
メガバンク3行の貸付残高は約1.6兆円にのぼる
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 東京都在住の鈴木雄介さん(仮名・57)は、2010年に消費者金融から借りた10万円が、その後に訪れる自己破産へのきっかけだった。

「半月板を損傷し、杖や補装具を購入するために消費者金融から借金しました。そこに母親ががんになり、治療費や生活費の負担が大きくなっていきましたね」

 その後、鈴木さんも糖尿病を発症。仕事をしながら入退院を繰り返す日々が続いた。

「追い詰められたときに目にしたのが、銀行のカードローンの広告でした。本当に借りられるのかと思いつつ申し込んだら簡単な審査で、消費者金融のように収入証明書の提出も不要。会社への在籍確認だけで通りました」

 そのとき、鈴木さんは「これで食いつなげる」と安堵したというが、借金は膨らむばかり。そして、限度額ギリギリになったところを見計らうかのように、銀行からキャンペーンメールが届いた。

「融資枠を増額しますよという案内メールが来て、無理だろうなと思いつつ申し込んだのですが、審査が通って、100万円、200万円と、どんどん上限額が増えていきました。限度額がいっぱいになってどうしようもなくなったとき、別のカードローンで……と思い申し込みました」

 すでに多額の債務を抱えつつも、さらに借金を重ねようとした。1枚目が限度額いっぱいで不安はあったが……。

「2枚目も簡単に審査が通りました。もう無理だと思いましたけど、ほかでも借りられてホッとしましたね」

 だが、破滅はすぐに訪れた。2年ほどで消費者金融とカードローンへの借金総額が約650万円に。仕事も体調の悪化から休職。返済にも限界を感じて、弁護士に相談をして自己破産した。

「当時は藁をもつかむ思いでしたけど、考えが甘かったですね。なんとしても返済しなくてはと思っていましたけど、気がついたときにはもう遅かったです。本当に後悔しています」

 現在は自宅で療養しながら、1日も早い社会復帰を目指しているという。

 2016年、個人の自己破産の申請が、13年ぶりに増加した。その背景のひとつにあるとみられる銀行のカードローンが、個人の暮らしを破壊し始めている。

 普段の生活費や医療費などが、個人の生活を追い詰める昨今。経済ジャーナリストの荻原博子さんは、借金の質の変化に注目する。