「遊ぶ金欲しさに借りる人は少ないですね。今は切実に生活するお金を必要とする人が多いです」と指摘し、続ける。
「経済も下降線をたどり、社会保障費も上がる。それなのに給料は上がらない。子どもの入学金や、住宅ローンも払わなくてはいけない。そんな経済状況が、カードローンに手を出す人が多い背景にあります」
銀行カードローン残高が、急速に増えている。
2012年までは3兆円台で推移していた総額が、今年3月末には6兆円台に増加。自己破産予備軍の温床になっているという。
「はっきりいって、銀行がこんないい加減にお金を貸すことをするのか、というのが想定外でした。返済能力以上の金額を簡単に銀行が貸してしまっているんです」
そうあきれるのは、首都圏生活保護支援法律家ネットワーク事務局長の森川清弁護士だ。かつて消費者金融が生活者に貸しつけ高い金利をじゃぶじゃぶ稼いでいたうまみを、そっくり銀行が持っていくのが、今だと指摘する。
森川弁護士が続ける。
「貸金業法では、貸付金額が50万円を超える場合は、収入証明書が必要で、個人の貸付総額は原則年収の3分の1までに制限されています。消費者金融への規制が非常に厳しくなったんですが、そのかわりになったのが銀行です」
銀行は貸金業法の規制外だと話し続ける。
「約15%の金利の数パーセントを保証会社である消費者金融にバックするだけで、銀行は痛まず貸せば貸すほど儲かるという仕組みになっています」
全国銀行協会の小山田隆会長は5月18日の記者会見でカードローン業務について、
「しっかり見直していく必要がある」と、問題があるという認識を示した。
前出・森川弁護士は、
「銀行の自主規制に任せるのではなく、そこは法規制をしっかりやっていく。これがいちばん大切ですよね」
銀行のパンフレットは、インターネットなどでも簡単にカードローンの手続きができることをPRする。
後ろめたい気分で消費者金融の店舗に入って借金をしていた昔の感覚はなく、銀行のキャッシュディスペンサーで預金者と同じように引き出せるため、利用者に“借金の感覚”が薄くなっている。
前出・荻原さんは、
「いちばんは手を出さないこと。苦しいときも、節約できるところはきっちりと節約して、何とかやりくりをしていく。銀行に預金をしても利子は0・001%しかつかない。一方でキャッシングの利息は14%前後。つまり預金の1万4000倍もの利息がつくわけです。それくらい高い金利を払うことになることをよく認識してほしいですね」