─間違っているとは?
「こっちに引っ越したとかじゃなくて、俺はそこ(りさ子が住んでいるところ)に住んでいるからね。前住んでいたところも俺の家だよ。
ここは、25年前に俺がまだ独身のときに買ったマンションで、カミさんとかも一緒に住んでいた。俺がいろいろなところに移籍したり、子どもがまだ小さいから別のところに借りたりしたんだよ」
─つまり、別居しているわけではないと?
「俺、今日の朝もそこ(りさ子が住んでいるところ)から来たよ。サッカーのスケジュール上、家にいるのは1週間に3日かもしれないし、4日かもしれないけど、それはコンディションとかもあるからね」
─コンディションですか。
「俺にはもう10年以上、調理師がついていて、試合が近くなったり、試合中にコンディションを整えるために、その食事を食べたいときは、こっちに泊まって食べることもあるよ」
また、家族が住む家と練習場が近くなったことで、
「前よりも家族と一緒にいられるようにはなったかな」
と笑顔を見せた。
─ご家族でご飯に行ったりすることも増えましたか?
「昔から食事とかは、子どもが休みのときによく行っていましたよ。前は家族にあんまり会えなかったけどね。今は、俺が帰れるから、外食よりも家で食べることが増えたと思うよ」
─引っ越し先は、景観もよさそうですね。
「家族は気に入ってくれてるみたいだから環境はいいんじゃないの。景観もそうだけど俺が近くにいるってことで、みんな喜んでくれるしね」
今でも、カズは試合が近づくと、これまでひとりで住んでいたマンションに行くこともあるようだ。しかし、家族が暮らす家に帰る頻度は、以前よりも確実に増えている。長年続いた“仮面別居”生活が解消に向かっているのは明らかだ。
このあと、身体のケアをしにいくというカズ。
取材のお礼を言うと、右手を差し出してきた。握手かと思い、記者も右手を差し出すとピースサインを作って、
「じゃんけんだよ(笑)」
さらに、別れ際にも右手を差し出してきたので、こちらがチョキを出すと、
「負けた(笑)」
今度は握手をしてくれた。鮮やかなフェイントからの神対応、いや“キング”対応。家庭という、もうひとつのグラウンドも安泰のようだ。