「『オレオレ詐欺』をはじめとした特殊詐欺は2003年ごろから社会問題化し、日々、注意喚起や摘発に努めていますが、犯行に歯止めがかからない状態です。被害者は金銭的な損害に対してはもちろん、騙されたこと自体におおいに傷つき、体調を崩したりふさぎこんでしまう人も。卑劣な犯罪のひとつなんです」
と語るのは、警視庁犯罪抑止対策本部特殊詐欺対策第一担当管理官の山上嘉人警視。警察庁の統計によれば、特殊詐欺の’16年の認知件数は、前年比2・4%増の1万4154件。’17年1~4月までの累計は前年から1393件増というハイペースで推移している。
一方、検挙件数は前年比8・7%増の4471件で、’11年以降で最多だ。
「詐欺集団のアジトの摘発などにも力を入れ、着実に検挙を重ねていますが、それをしのぐ勢いで発生しています。いくら対策を立てても新種の手法でかかってくる。まさにイタチごっこです」(山上警視、以下同)
そもそも特殊詐欺は、不特定多数に対し、対面することなく、電話やメールを使って騙すのが特徴。オレオレ詐欺に代表される4つの『振り込め詐欺』と、『振り込め類似詐欺』に分けられる。
被害が後を絶たないのは、犯人にとってローリスクだから、と山上警視。
「検挙者の約半数は現金を受け取る『受け子』。組織化が進んでいて、受け子が捕まっても、元締めにまで捜査が回らないよう情報管理が徹底されているのです」
手口別で最も多いのはオレオレ詐欺で、全体の約4割を占める。また最近、増加が目立つのが、役所など公的機関をかたりATMに誘導してお金を振り込ませる『還付金詐欺』だ。’16年は認知件数が前年比55%増と多発している。
「被害金の受け渡し法は、現金受け取り型が減少し、振り込み型や電子マネーを騙し取る手口が増加傾向に。昨年は認知件数が増加した一方で被害額は減少していますが、この2タイプの被害が多いことから、少額の犯行が多数回行われていると考えられます。銀行振り込みは1回ごとの上限額がありますからね。中には、1度騙せるとわかった相手から“まだ足りない、もっと欲しい”と吸い上げ、最終的に何千万円も騙し取るケースもあります」
多額の現金を引き出す不信感をぬぐうため金塊を買わせたり、現金の受け渡しにバイク便を使ったりと、詐欺師らは騙しのフィールドを着々と広げている。
「特殊詐欺は、電話がカギになります。入り口はネットやメールであっても、最終的には電話で騙す方向にもっていく。日中電話に出られる人、うまく言いくるめられたりして相手とコンタクトをとってしまう人はみな、被害者になりうる」