広く一般を狙うネット詐欺に対し、特定の層に狙いを定めてくる詐欺もある。

 悪徳商法の被害者心理に詳しい立正大学の西田公昭教授によれば、「詐欺師は人の欲望や不安をついて仕掛けてくるのが常」。若者に多い3大欲望「金」「恋愛」「結婚」のうち、金への欲望を利用して騙す「投資詐欺」が最近、根を広げているという。

夢の大金を手にするはずが…(マンガ/スヤマ・ミヅホ)

「ホテルのロビーなどで、オジサンが若者相手にふんぞり返り懇々と話す光景を見たことはありませんか。それはたいていが投資詐欺。学生や新社会人などは意外とカモにされやすい」

 そう指摘するのは詐欺問題に詳しい堀井準弁護士。若者が抱く将来への期待をうまく刺激して、口車に乗せていく手口だ。

相手に向かって“君、いつまでこんな生活してるつもりなんだ、世の中では大きなお金が動いてるんだよ”“政治家の〇〇やタレントの××も資金調達して世に出ている”“100万円投資してくれればすぐに2倍3倍にできる”などと、もっともらしく説き続けます。30分もまくし立てられていると、だんだんその気になってきて、お金を渡してしまう」(堀井弁護士、以下同)

 最近、堀井弁護士が担当したのは、30代男性がFXを名目にした投資詐欺で3800万円を騙し取られたケース。SNS上で知り合った投資仲間から“ある会社に出資すると、月4割もの配当を得られる”との話を信じて大金を工面し預けたものの、実際は投資すら行われていなかったそうだ。

「“有名政治家も協力、会長は芸能人も弟子入りしているスゴ腕”というので信用したそうですが、もちろんウソ。そもそも月4割なんて配当はありえない。あったとしたら、もはや投資ではなくギャンブルです。まずは、そこで怪しいと気づくべきでした

 騙し取られた3800万円のうち自己資金は100万円ほどで、残りは知り合いからかき集めたお金だったという。彼自身が詐欺と訴えられる可能性もあり、事態はより深刻だ。

借金をしてでも元手を作るよう誘導されたり、“このままでは確実に老後破産! 今しかない!”と強く迫られたりすることも。あまりお金を持たない若者でも、狙われるおそれがあるんです」