「ある日、義母あてに“銀行”から電話があり、使用口座の確認という名目で口座番号や名義、住所、電話番号を聞かれたそうです。紳士的かつ、やさしい口調で疑いもしなかった、と話していました」
都内在住の小沢いずみさん(55歳=以下、すべて仮名)はそう顔を曇らせる。
先日、同居の義母・聡子さん(84歳)が「なりすまし詐欺」で126万円を騙し取られたのだ。
電話を切ったあと、聡子さんは急に不安に。銀行に電話をかけてみると、
「銀行は“そのような内容を電話で聞くことはないので今後、電話があっても暗証番号だけは教えないで”と。ところが本人は、暗証番号さえ言わなければ大丈夫だと思ってしまったようです」
数日後、聡子さんあてにインターネットバンキングの口座開設のお知らせが届く。聞き出した情報をもとに、詐欺師が勝手に申し込んだのだ。その中には、本人認証として1度だけ有効な「ワンタイムパスワード」が表示される「トークン」と呼ばれる機器が同封されていた。
「義母はインターネットバンキングが何かをよく知らず、危機感もなかったようです。それで後日、封筒の内容物を確認する電話があったとき、聞かれるがままにトークンのパスワードを教えてしまったんです」
こうして聡子さんの口座から、1日の引き出し限度額100万円が一気に詐欺師のもとへ。
「暗証番号を伝えていないので詐欺に遭っているという認識はなく、翌日、再び電話があったときにもパスワードを伝えてしまいました」
これで、口座に残っていた26万円も送金された。被害に気づいたのは、数日後。
「義母は30万円ほどのお金が必要になり、銀行に出向いたところ、残高不足で出金できなかったんです」
保険で被害額の7割は戻ってきたものの、ショックのあまり、聡子さんは、うつぎみに。経済的にも精神的にも大きなダメージをこうむる家族の無念は計り知れない。