「平和そうなこの公園の一角で、残虐な犯行が繰り返されているんです。おぞましい犯人がいまも公園内を闊歩していると思うと我慢できない」

 と地域の個人ボランティアを夫婦で10数年続けている加藤英次さん(64)は憤る。

猫の体内から鉛弾

 千葉市美浜区の海沿いに稲毛海浜公園はある。ヨットハーバーやサイクリングコースのほか各種施設を併設し、面積は東京ドームの約18個分。市民の憩いの場だ。

 同園で今年1月8日午前7時半ごろ、いつものように散歩がてらにエサをあげていた加藤さん夫妻は、第2駐車場でひとみ(推定10歳・メス)が血まみれでうずくまっている姿を発見した。

「私たちが遊歩道を通ると3、4匹のが寄ってくるんですが、ひとみだけ来なかったので、おかしいなと思って捜したんです。右脇腹にケガを負ってヘロヘロになっていたため、すぐ市内の動物病院へ連れて行きました」(加藤さん)

 獣医師は、「どうしの喧嘩によるものか、人為的な虐待かは特定できない」と言い、止血と点滴治療を施したという。

保護されたひとみは手術を受け、鉛弾を摘出
保護されたひとみは手術を受け、鉛弾を摘出

 加藤さん夫妻は、ひとみが回復するまで自宅で預かることを決めた。当初は水を飲むのもやっとだったが、次第に立ち上がってエサを口にするようになった。トイレも自分でするようになった。

「それでも、あまり食べないで、ずっと寝ている状態でしたね」(同)

 約2週間後、右脇腹のケガとは別に、ひとみの肩甲骨近くのかさぶたの下に金属のようなものが埋まっているのを見つけた。再び動物病院を訪ねると手術になり、鉛弾1発が摘出された。長さ約8ミリ、幅約5ミリで鈍い灰色のひょうたん状の弾丸だった。

「エアライフル(空気銃)で撃ったんでしょう。無登録ならば銃刀法違反ですよ。は毛が厚いし、皮膚も分厚い。それを突き抜けて肉まで達していたんですから十分に殺傷能力はある。人通りのない深夜、エサでおびき寄せて撃ったとしか思えない。獣医からは右脇腹の手術もすすめられたのですが、高齢で弱っていたため耐えられないだろうと思って、それはやめました」(同)

摘出された長さ約8ミリの鉛弾
摘出された長さ約8ミリの鉛弾

 ひとみはしばらく小康状態を保ったが、次第に容体は悪化し、最後はエサもほとんど食べず、糞尿も垂れ流しになった。2月15日夜、ひっそりと息を引き取ったという。

「約10年前、公園でテント生活をしていたホームレスの飼いが産んだ子です。名前は歌手の石川ひとみからとった。いつも私たちがエサをあげにくるのを“まちぶせ”していましたから」

 と加藤さんは振り返る。