『ショートショートドロップス』は、宮部みゆきや恩田陸、萩尾望都、皆川博子、三浦しをん、辻村深月、村田沙耶香など、直木賞受賞作家やミステリー作家、SF作家、漫画家など、多岐にわたるジャンルで活躍する15名の女性作家の作品をまとめたショートショートアンソロジー。編者は一昨年、作家デビュー40周年を迎えた新井素子さんだ。
3年かけて編んだ
女性作家の作品集
「3年ほど前に、“女性作家によるショートショート集を作りたいのですが、編者をやっていただけませんか”というご依頼をいただいたんです。私はもともと本を読むのが好きですし、企画自体もおもしろそうですし、何作か心当たりの作品もあったので、お引き受けすることにしました」
本作を編む中で、最初の数編は難なく決まったそうだ。だが、その後は苦労の連続だったという。
「今、本屋さんに並んでいる小説は長編や連作短編がほとんどで、普通の短編集は少ないんですね。だから、短い作品に出あうきっかけが思ったほどなかったんです。それに、一般的に短編というのは400字詰め原稿用紙で50枚から80枚程度くらいのものが多いんですね。
でも、さすがにそれだけの分量の作品をショートショートとは呼べませんから。編集者の方と相談し、40数枚程度の作品まではいいことにしたんです」
本書の中でトリを飾るのは、新井素子さんのショートショート『のっく』だ。
「えっと、15作品も収録されている本なので、最後にひとつくらいなら見つからないかなと思って組み込みました(笑)。私、ノックの音からはじまる物語が収録されている、星新一さんの『ノックの音が』というショートショート集がすごく好きなんです。私自身、ノックの音からはじまる作品をいくつか書いているのですが、『のっく』は、ノックをするならドアとか壁とか、木でできたものがいいなぁ、という発想から生まれた作品です」
実は、新井さんのデビューには星新一の存在が大きく関わっている。星新一つながりでいえば、本書に収録されている『初恋』の矢崎存美は「星新一ショートショートコンテスト」を機にデビューした作家だ。
「『初恋』は、人間の世界にベビーシッターとして登場するぶたのぬいぐるみの山崎ぶたぶた氏のお話です。矢崎さんは『編集者ぶたぶた』とか『刑事ぶたぶた』とか、ぶたぶたシリーズをずっと書いていらっしゃる作家さんで、私は最初のシリーズの単行本の帯を書かせていただいたことがあるんです。『初恋』は文芸誌に掲載されたときに読んでおもしろいなぁと思いましたし、本書のお話をいただいたときに真っ先に頭に浮かんだ作品なんです」