現在、ホームレスと呼ばれる路上生活者の数は全国で4555人。この10年で7割近く減少しているという。東京都は’24年までにホームレスを“ゼロ”にする『ホームレスの自立支援等に関する東京都実施計画』を実施中。また、大阪府では’25年開催予定の万博に向け、日本最大級の日雇い労働者の街として知られる西成のあいりん地区を再開発し、観光客が歩きやすい街づくりに舵を切った。
一体、ホームレスたちはどこへ行ったのか? また、このまま消えていくのか? ホームレスを取材して20年、著書『ホームレス消滅』で彼らの生活について詳しく触れている、村田らむさんに語ってもらった。
財布を落としてホームレスになった人も
「ホームレスになったきっかけは、財布を落として免許証をなくしてしまったから会社を辞めた、なんて人も多いんです。再発行したり、住まいを失う前に手立てはいくらでもあるのに。ちょっと変わった人が多いのは事実」
と、取材で自身が感じた彼らの印象を話し始めた村田さん。一般人にしてみると、彼らは何をするかわからない怖い人、というイメージがあるが、
「確かに急に奇声を上げたり突然、追いかけてくる人もいます。ただし、そういう人は全体から見ればほんのわずかです。僕が彼らに話を聞き始めた’90年代末は、生活保護を受けるにはハードルが高くて、住所がないと申請できませんでしたし、60歳前だとまず通らなかった。
いったんホームレスになってしまうと、社会復帰がものすごく難しい状況だったんです。あのころは不景気で普通の人もホームレスに転落してしまう人も多かったので、ちゃんと話を聞くことができる人もたくさんいました」
しかし、彼らの救済システムが改善され、やりたくないのにホームレスだった人が減っていくと……。
「好きでやっている人もいますが、精神的な疾患を抱えている人たちがかなりの数いることは確かです。そういった人たちは、自ら生活保護の申請などできませんから、ホームレスからの離脱はなかなかできません。本当はいちばん福祉の手を差しのべなくてはいけない存在だと思うのですが……」