3名の死者を出した「渋谷温泉施設爆発事故」に巻き込まれ脊髄を損傷、半身不随となった池田君江さん。自由に好きなところへ出かけられる当たり前の日常が一変しても、彼女はあきらめなかった。車椅子ユーザーに必要な情報と、店側に「歓迎する気持ち」があれば、壁は突破できると知ったから。当事者目線のサイトを作り、講演をこなし、目指すは「ココロのバリアフリー」。すべての人にやさしい社会をつくるため──。
車椅子ユーザーに“ウエルカム”の意思を伝える
「ココロのバリアフリー応援店検索サイト」というポータルサイトがあるのをご存じだろうか。
そこには、飲食、趣味、美容、ショッピング、生活、スクール、冠婚葬祭のカテゴリーに分けられた2600以上の店舗や施設が「ココロのバリアフリー応援店」として掲載されている。エリアやジャンルのみならず、入り口や店内の段差、階段やエレベーターの設置状況、トイレの段差や手すりの有無といった条件で絞り込むこともできる。
つまり車椅子ユーザーにとって、自分が入店できる店を検索できるサイトなのだ。
特筆すべきは、店名や営業時間、住所といった基本情報のほか、詳細な「バリアフリー情報」があること。段差の高さ、入り口の幅から近隣のトイレの場所にいたるまで、当事者目線で必要な情報が網羅されている。
これらの「ココロのバリアフリー応援店」にはステッカーが配布され、店頭に貼ることで、車椅子ユーザーに“ウエルカム”の意思を伝えられるという。
このサイトを運営しているのは、認定NPO法人「ココロのバリアフリー計画」。理事長を務める池田君江さんは、こう話す。
「車椅子ユーザーは、日ごろから自由に、気軽に外出することが難しい。でも、情報さえあれば行動範囲は広がります。重要なのは、バリアがあってもお店側が“お手伝いをしますから、どうぞ気軽に来てください”と宣言していることにあるんです」
実は君江さんは、13年前まではごく普通の専業主婦だった。しかしある日、予期せぬ事故に遭遇し、人生を激変させた。そして、奇跡的な出会いを経て現在の活動にたどり着いたのだった。