目次
Page 1
ー 兄を溺愛する毒親
Page 2
ー “イヤミ” “ねだり”の電話が会社にまで
Page 3
ー 私も毒親になるかも不安とともに出産へ

 兄を溺愛し、自分には目を向けない母親。差し伸べる娘の手を振り払うように、冷たい仕打ちを続ける彼女。年をとるごとにひどくなる、娘に対する金の無心と罵倒をやめない理由とは──。

兄を溺愛する毒親

「母は小さいころから、2歳上の兄ばかり可愛がっていました」

 こう語るのは関西出身の詩織さん(仮名:46歳)。彼女の母親は、詩織さんが物心がついたころから近所の人たちに兄の自慢話をしていたという。

「兄は、くりっとした目に鼻筋が通った、いわゆるイケメン。容貌だけでなく社交的な性格も母親にそっくり。でも私は父に似て和風顔。無口で、どちらかといえば慎重な性格です。母は私を“暗い”と罵(ののし)っていました」(詩織さん、以下同)

 わがままで自分勝手な母親を、寡黙な父親が見守っているという夫婦だったという。

「父は私が母親から罵られるたびに庇(かば)ってくれました。でも私は耐えられず、高校生のときに“母親から離れて実家を出る”と決めました」

 母親の冷たい仕打ちを避けたい。その一心で国立大学に合格して上京する。一方、兄は専門学校に進学し、地元で就職をするが給料を趣味のバイクや車に費やして借金まみれに。派手な女遊びで近所でも放蕩(ほうとう)息子とうわさだった。それでも母親は兄を溺愛していたという。母親の毒親ぶりが強烈になったのは、詩織さんが就職してからだ。

「東京のマーケティング会社に就職してから病気がちになった父親のことが心配でした。美味しいものを食べてもらいたくて毎月実家に5万円を仕送りしていましたが、母親は“高い給料をもらっているんでしょ、もっと送りなさいよ”と月末のたびに電話で追加をせびってくるんです。

 でも私も毎月の仕送りでカツカツ。ボーナスから10万円以上送ったこともあります。それでも足りないと文句を言うんです」

 詩織さんが送金しても、母親からお礼の言葉はひと言もなく、母親からの無心はひどくなる一方。そこで詩織さんは父親と連絡を取ると、彼女からの仕送りを知らされていなかったことがわかる。

「呆然(ぼうぜん)となりましたよ。私の仕送りは兄の借金にあてがわれていたんです……

 電話で抗議したものの母は「だから何?」と冷淡な態度。しかも「たったひとりの兄を助けてあげたくないなんて、あんたは冷酷だよ」と罵倒してくる始末。このときから母親の声を聞くのも嫌になり、電話をスルーするように。これで逃れたつもりだったのだが──。