目次
Page 1
ー 高齢になり強まる支配「早く死んで」と心の声
Page 2
ー 介護して気づいた毒母育ちの自分
Page 3
ー 「恩」と「怨」に揺れ動き延命治療に迷う
Page 4
ー 「介護しなくてもいい」親との境界線をひく

「母は支配欲が強く、いつでも女王様。娘の言うことはいっさい認めず、全否定されて育ちました」と話す、エッセイストの鳥居りんこさん。10年に及ぶ壮絶な介護の末、2017年に母親を看取った。

高齢になり強まる支配「早く死んで」と心の声

「私は仕事をしながら子育てをし、夫に尽くし、親孝行をする儒教世代の生き残り。上にも下にも仁義を尽くすのが当たり前、親孝行したいと思いながら、『早く死んでほしい』と心底思っていたんです」(鳥居さん、以下同)

 鳥居さんの母親は20年前に片目を失明。その後、徐々に歩行が困難になり寝たきりになる難病「進行性核上性麻痺」であることが判明する。

「母はいつでも悲劇のヒロイン。『こんなに“かわいそうな私”になぜ優しくしてくれないの?』と常に上から目線だったんですよ」

 鳥居さんは、姉、兄がいる3人きょうだいの末っ子、幼いころから母親の愚痴の聞き役だったという。

「父は単身赴任が多く、姉と兄は早くに家を出たので、私と母の2人暮らしの時間が長かった。母が決めた謎の“家庭ルール”に縛られ、地雷を踏まないようにするのが精いっぱい。母はどこに地雷があるのかわからない人で、突然ヒートアップして怒り出す、激情型の性格でした」

 高齢になると、より感情がむき出しになり、手がつけられないことも多かった。

「介護になってからは“スーパーウルトラ”毒母です(笑)」

 しばらくすると、主に面倒を見ていた姉が身体を壊し、鳥居さんが介護を担うことに。