「年々、孤独死が増えていることを実感しています。実際、遺体の腐敗や腐乱でダメージを受けた部屋の原状復旧作業を行う特殊清掃業者さんの数は、確実に増えています」
そう話すのは、孤独死に関する取材に取り組むノンフィクション作家の菅野久美子さん。実際に孤独死の現場へ足を運び、特殊清掃業者とともに作業をしながら取材を進める中で、特にコロナ禍による“社会の分断”の影響を痛感しているという。
コロナ禍で増加した、孤独死後の放置
「コロナ禍になってから遺体発見までにかかる日数が増えました。以前は数日で見つかることが多かったのですが、コロナ禍では何か月も放置されていたとみられるケースに遭遇する機会も。数か月放置されたご遺体や部屋の状態は本当に悲惨です。家に帰ってからも“死臭”が衣服から抜けず……」(菅野さん、以下同)
“孤独死”の背景には“貧困”があるのか。
「確かに、孤独死される方には経済的な困窮が見受けられるケースが少なくはなく、貧困は孤独死の原因のひとつです。ただ、私が取材を始めた7年前と比べると、ある程度の貯金をお持ちだったり、高級マンションで暮らしていたりと、中間層や若い方の孤独死が増えている印象があります。それほど、日本では孤立や孤独が進んでいるのだと思います」
孤独死の背景にあるのは周囲からの孤立
孤独死の問題は“死”そのものよりも、その後にある。
「ひとり暮らしで、家でひとりで亡くなることは誰しもありえなくはないことです。ただ、すぐ見つけてもらえる環境かが重要。人とのつながりがあれば遺体が傷まないうちに見つけてもらえるはずです。遺体が発見されない状況こそが問題。その背景には孤独や孤立の問題があるからです」
生涯未婚率は右肩上がり。単身世帯の増加と比例して孤独死が増えるであろうことは想像に難くない。
日本における孤独死の平均年齢は男女ともに61歳、高齢者に満たない年齢での孤独死の割合は5割を超えている。まだ体力もある年代の人がなぜ、孤独死してしまうのか。
「正社員として勤務をしていたら、欠勤が続くと同僚などが自宅に様子を見に来るなど、何かしらのサポートを受けられると思います。でも、派遣などで勤務先を転々としている方は、そうしたサポートは期待できないでしょう。また、60歳前後で退職をすることで、人や社会とのつながりが少しずつ薄れていきがちです」
高齢者であれば周囲も「もしかして」と気遣うが、60代はまだまだ自分も周りも“死ぬこと”は想定していないのだ。