芸能人の心の不調で、最も多いのがパニック障害。KinKi Kidsの堂本剛さん、IKKOさん、タレントの釈由美子さん、歌手の星野源さんなどがカミングアウトしている。
「何の前触れもなく、激しい動悸、息苦しさ、震えやめまいなどのパニック発作が起こり、何度も繰り返されるのがパニック障害です。あまりの苦しさに死んでしまうのではという強い不安感に襲われるのです」(奥田先生)
ある日突然パニック障害に
そのパニック障害で10年近く苦しんできたのが、内海和子さん。
「週3でジムに通い、ヨガもやっていたのに、ある日突然行きたくなくなった。なんでそうなったのかわからないのですが、玄関から出られなくなった。身体も心も鈍くなってきて、何もやりたくないということがどんどん増えていきました」
大好きだったお風呂にすら入るのも面倒になったそう。そして、夜になると、心臓がドキドキして、このままでは死んでしまうのではないかという恐怖に襲われるようになっていく。
「私の家系は心臓病が多く、私も発症したのかと思い、心臓専門医の診察を受けたけれど、どこに行っても異常はないんです。だけど夜になると、心臓がドキドキして息ができなくなる。急いで車で病院に向かうと、病院に着くころにはもう治まってしまう。これが毎晩のように続くんです」
夫は、そのたびにずっと背中をさすってくれた。娘は、病院に電話をかけて夜間診療の手続きをしてくれた。こんな状態のまま3年近くが経過した。家族もどれだけストレスだったことだろう。でも内海さんは、自分の苦しさで押しつぶされかけていた。つらくて、食器を投げたり、暴れたり、布団を破いたりしたこともあったそう。
「そんなとき友人に、心療内科をすすめられたんです。なんで私が心療内科なの? 反発心もあったけれど、自分でも精神的な何かが関わっているのかなと、感じていたんです。しかも友人の『イケメンの先生だから』のひと言で、受診してみようかと(笑)」
自分の不調を受け入れたら、ラクになった
心療内科で“パニック障害だ”と、告げられたとき、「やっと、自分のことが見えてきたんです」。
カウンセリングを受け、薬の服用も始めた。するとドキドキすることもなくなった。
「心臓病じゃないかと疑い、また年齢的なこともあって、だるい、やる気が起こらないといったことは更年期障害のせいだと思い込んでいました。自分の心の不調を認めたくなかったんです。認めて受け入れたらラクになりました。今は7割くらいまで戻ってきている気がします。主人に誘われてウォーキングを始めて、何かやっていこうってそう思えるようになりました。またジムにも通えるようになりたいしね」
10年近くもパニック障害と向き合ってきた内海さん、心の支えは何だったのだろう。
「どんなに心が落ち込んでも、ネイルとまつげのエクステと、美容院は続けていました。いつでもすぐにスタートできるっていう準備をしてきました。とくに女性は美しくなろうという気持ちが元気の源になるんじゃないかしら」
苦しい毎日の中でも、自分の心浮き立つものを探して、“きれい”と思う気持ちを大切にし続けた内海さん。
「更年期障害とパニック障害の違いは、死んでしまうんじゃないかというくらいの強い不安感があるかどうか。更年期障害では、そこまでの不安感はありません。更年期症状かなと思ったら婦人科、ひどいパニック症状の場合は心療内科に相談を」(奥田先生)
(取材・文/水口陽子)