目次
Page 1
ー 華道家・假屋崎省吾の2度目のイベント
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ー 由緒正しきバックボーンから生まれるギャップ ー 人生の師匠とする美輪明宏さんへの思い
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ー 美をつむぎだす手にあるたおやかさと力強さ
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ー 被災地域の復興や地道に頑張る地方のために ー 芸術家とて人間。お金も大事
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ー 母、そして美輪明宏さんからいただいたもの ー お腹の中が真っ白なパートナーと犬たちに支えられて
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ー 楽天家すぎた両親たちに節約を説いた少年時代
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ー 「生き甲斐」は一つではなくいくつも持つこと

 

 東京メトロ千代田線・湯島駅にほど近い、旧岩崎邸庭園。明治29年に造られた三菱財閥岩崎家の豪邸と庭園は、国の重要文化財にも指定されている。

華道家・假屋崎省吾の2度目のイベント

室内の生け花だけでなく、外に咲く花の向きにも気を配るという(撮影/伊藤和幸)
室内の生け花だけでなく、外に咲く花の向きにも気を配るという(撮影/伊藤和幸)

 どの季節にも丹精された花が咲き、飾られ、管理者も観覧者も往時を偲び今を楽しみ未来を守るため、大事にしている洋館に和館に撞球室は、豪壮で優美な空間が広がる。

 桜は葉桜となった4月半ば、そこで当代きっての人気を誇る華道家、假屋崎省吾の2度目になるイベント「華と音楽で彩る春 in 旧岩崎邸~『春をいける』假屋崎省吾の世界 The second~」が開かれた。

 時間が止まっているような、しかし永遠をも感じさせる旧岩崎邸の各所、要所にいけられた花々は、ある部屋では真っ先に人目を惹く華やかさだ。

 別の部屋では、由緒ある建具などを引き立てるよう密やかなたたずまいを見せる。

「なるほど、ここにはこの花がこういけられているべき」と、観る者を納得させる計算がされ尽くされた空間が広がる。

 次の部屋に入ると、その空間はがらりと色彩を変える。先ほどの花と背景への緻密な計算と、きまじめな姿勢だけでなく、華道家の天性の勘、もはや霊感といっていいかもしれない判断、軽やかな遊び心も発揮される。

「ここにこの花を、こんな花器にこんなふうにいけるのか」と驚かされもするのだ。

 假屋崎は、ここ旧岩崎邸だけでなく、京都・二条城といった歴史的建築物の数々、そしてJRA(日本中央競馬会)のイベントでは『ベルサイユのばら』といった人気漫画ともコラボレーションしている。

 どれも互いを引き立て合って、どちらも負けていない。新たな魅力を引き出し合う優美な融合にひたすらうっとりさせられる反面、もはや死闘といっていいかもしれない真剣勝負の緊張感も感じさせられる。

 完成されたいけばなに感嘆し、しかし華道家の決してやまない挑戦をわれらも待ち続ける。