目次
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ー 腹腔鏡手術で全摘、お腹には5つの穴が
Page 2
ー がんで他界した母と同じ年齢で病気に
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ー 『もう年だから』は禁句

 昨年5月、初期の子宮体がんと診断され、子宮と卵巣の全摘手術を受けた、歌手藤あや子さん。体調に異変を感じたのは、大阪での公演中だった。

「3月ごろに腰痛と不正出血がありました。不正出血は数年前にもあり、お薬で出血が止まったので、また同じだろうと。でも腰痛は、なかなか治らない。前かがみになっても反らしても痛くて、トレーナーでもある夫にテーピングをしてもらいながらやり過ごしていました」

 3週間ほど東京に戻れない中、体調を夫に話すと、すぐに受診するようすすめられた。

「東京に戻ったら、すでに夫が病院を予約していて(笑)。翌日、半ば強引に診てもらうことになりました。子宮内膜の細胞を少し取って検査する細胞診をやってもらうと、正常な細胞とは異なる『異型細胞増殖症』という診断でした

腹腔鏡手術で全摘、お腹には5つの穴が

 つまり“黒に近いグレー”であるため、4月上旬に紹介先の病院で検査をした。

「後に手術をしていただく先生に診てもらい、再度細胞を取って検査へ。結果は数週間先になるのですが、がんになる可能性がある細胞とのことで、『手術日を仮予約しましょう』と言われ、私の中では、“まだがんと決まったわけじゃないのになんで?”という気持ちもありつつ、キャンセルもできるからと、あくまで仮で5月2日に手術の予約をとったんです」

 後日の診察で、初期の子宮体がんであると告げられた。このがんは子宮の内側を覆う子宮内膜に発生し、閉経後の50〜60代の罹患者が最も多い。約9割に不正出血の症状が見られるのも特徴だ。

 藤さんは「がん」という言葉を聞いたとき、迷いは消え、覚悟が決まったという。

「『一部がん化しています』と言われた瞬間、『じゃあ取りましょう』って、スパッと気持ちが切り替えられました。がんとはっきり言われたことが、私はありがたかった。“手術日を仮予約して良かった!”と思いましたね」

 ゴールデンウイーク中の5月1日に入院。翌日、子宮と卵巣の全摘手術を受けた。

「担当医からは、がん細胞が増殖すれば卵巣や腸、肺などほかの臓器に転移する可能性もあると言われて。その可能性をなくすためにも卵巣まで取ったほうがいいと告げられ、私も納得しました」

 藤さんが受けたのは、内視鏡手術支援ロボット・ダビンチによる腹腔鏡手術。腹部に5か所の小さな穴をあけ、臓器を切除。腹腔内でそれを袋に入れ、膣から取り出す方法で行われた。出血量が少なく、身体への負担も少ない。手術後、夫からかけられた言葉に「心が救われた」と言う。