《キャンバスに夢中になりて描きゐしかの日のことはなほあざやかに》
新春恒例の「歌会始の儀」が1月22日、皇居・宮殿「松の間」で行われた。今年のお題は「夢」で、天皇、皇后両陛下や秋篠宮ご夫妻と次女、佳子さまらが詠んだ歌、それに応募作約1万6250首から選ばれた10人の入選者の歌などが、伝統的な発声と節回しで披露された。
時間を忘れて絵を描かれていた佳子さま

鮮やかなブルーのローブ・モンタントと帽子姿で出席した佳子さまの歌が冒頭のものだ。宮内庁の説明によると、佳子さまは、幼少のころから、絵を描いたり、工作や手芸でさまざまなものを作ることが好きだった。今ではそのように過ごす時間が限られているけれども、以前に描いた絵を見ると佳子さまは、絵を描いていた日のことを鮮やかに思い出すらしい。時間を忘れて絵を描いていたころを懐かしみながら、この歌を詠んだという。
両陛下に続いて、秋篠宮ご夫妻と佳子さまが入場した。佳子さまは、両陛下の前を通る際に丁寧に頭を下げ、両親と並んで席に着いた。
《絲と針夢中にオヤを編む先に二つ三つと野の花が咲く》
昨年12月上旬、秋篠宮ご夫妻はトルコを公式訪問した。糸と細い針を使ってスカーフなどの縁飾りを編む「オヤ」は、トルコの人々の間で長い歳月にわたって受け継がれてきた、きめ細やかな手仕事のひとつだ。紀子さまはトルコ訪問前にオヤを習い、帰国後もオヤの作品を編んでいるという。トルコの自然や人々の暮らしを思いながら夢中になって野の花を二つ三つと続けて編んだことを歌に詠んだ。
紀子さまの歌に続いて、秋篠宮さまの《初夢に何を見たのか思ひ出でむ幼き頃の記憶おぼろに》という歌が紹介された。正月、枕の下に「宝船」の絵を入れて眠りにつく習わしがあるが、秋篠宮さまは幼少時代、そのようにして寝ていたという。今回のお題が「夢」と聞いて、真っ先にこのことを思い浮かべたが、何の夢を見たのかは記憶が曖昧であるという思いを歌に詠んだらしい。
《我が友とふたたび会はむその日まで追ひかけてゆくそれぞれの夢》
この歌は、今回、「歌会始の儀」に初めて出席した、両陛下の長女、愛子さまが詠んだものである。昨年3月、学習院大学を卒業し、翌月からは社会人として日本赤十字社で勤務している。大学の卒業式、一緒に卒業する友人たちの晴れ姿を見て、学友も自分自身も、これからそれぞれの新たな道を歩んでいくことをしみじみと感じ、学友とのこれまでの日々と将来に思いを馳せた。
また、同じ大学には通わなかったけれども、別の道で夢に向かって歩みを進めている友人とのつながりも大切にしている中で、友人たちといつの日か再会できることを楽しみにしながら、その日までそれぞれの夢に向かって励んでいこうという、初々しい気持ちを詠んだという。