2013年、14年、16年と“世界で最も清潔な空港”に選ばれた羽田空港の清掃リーダー、新津春子さん。昨年出演したNHKの『プロフェッショナル仕事の流儀』で注目を浴び、今年に入ってもさまざまなテレビ番組でひっぱりだこ。6月17日(金)放送の『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS系)にも出演する。

 さらに、自宅での掃除術をまとめた著書『“世界一”のカリスマ清掃員が教える!掃除はついでにやりなさい!』が発売2か月で12万部を突破したという。私たちも日々繰り返す「掃除」という作業。それを突き詰めて“世界一”と称される仕事を成し遂げた著者の新津さんに早速、話を聞いてみた。

写真/新津さんの家庭での掃除のコツや心得をまとめた『“世界一”のカリスマ清掃員が教える!掃除はついでにやりなさい!』(主婦と生活社)
写真/新津さんの家庭での掃除のコツや心得をまとめた『“世界一”のカリスマ清掃員が教える!掃除はついでにやりなさい!』
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■掃除はなんといっても“疲れないこと”がポイント

 新津さんは私生活でも、とびきりの「キレイ好き」なのだろうか?

「部屋でゆっくりくつろぎたいから、清潔でいたいとは思いますが、家じゅうを毎日ちゃんと掃除するっていうのは、さすがに私でも無理(笑)。みなさん、毎日忙しいでしょう。だから掃除はなんといっても“疲れないこと”がポイントじゃないでしょうかね。日常のことですから。なにかの“ついでに”ササッと手を動かしてね。そのためには、汚れをためすぎないことと、あとは自分でぜんぶ抱え込まないことでしょうか」

 新津さんが多忙のときは、自宅の家事をご主人がサポート。

「やってくれるだけで、うれしいの。うまくできても、できなくても。共働きだから当たり前と思わず、なにかをしてくれたら、必ずありがとうね、って言葉で伝えています。だから、うちのダンナさんの家事能力もどんどん上がってきましたよ」

■そもそも掃除はなんのためにやるのか

「でもね、家で掃除をしていて、“なぜ私ばかり?”と感じてしまうこと、特に女性は多いんじゃないかな。お礼を言われたり、ほめてもらったりすることってほぼゼロでしょう。掃除って毎日やっても、その成果に気づかれないのでちょっとムナシイんですよね。料理をすれば、“おいしいね”くらいは言ってもらえるときがありますけどね、家事のなかでの“掃除”って、地位が低い。

 それで、そもそも掃除ってなんのためにやるのかなって考えると、自分が快適になるのはもちろん、家族を安心させたい心の表れかな、と思うの。

 誰でもきれいな空間にいれば落ち着きます。すると家族もますます家にいること自体を好きになって、幸せな空気が流れます。心地よい部屋をキープできていると、家族も部屋をきれいに使おうと思うのか、あまり汚さなくなるんですよね」

■奥深い作業を通して、何事にも“心を込める”ことを学ぶ

 たしかに、「幸せが自分にかえってくる」と思うと、掃除が苦になる気持ちが少しは減るような気がしてくる。新津さんによると、掃除で得られるメリットがたくさんあるという。

「たとえば私の場合“体力づくり”。歩数計をつけて、羽田空港の清掃をしているのですが、だいたい1日1万5000歩から2万歩、おなかとお尻を締めるようにしながら歩いています。ぞうきんをしっかり絞れるように、暇さえあれば手のひらをグーパーするエクササイズも。それに、清掃は工夫の余地がたくさんあるので、けっこう頭を使うんです。

 また、ときには清掃はチームで行う作業になるので、誰にどう指示をすればよいのか、伝え方にも心を配ります。これは家事を家族にも手伝ってもらいたいときにも応用。ただ“こうして”と一方的にお願いするのは、“指示”で、相手も心地よく的確に動いてはくれません。なぜその動作をしてほしいのかという理由をつけたして丁寧にお願いすることを大切にしています。

 何事もね、“心を込める”、ということが大切なんだなあと、清掃という奥深い作業を通して、日々考えさせられるんです」

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<著者プロフィール>

1970年、中国に生まれ、17歳で来日。家計を助けるため高校に通いながら清掃の仕事に従事。日本空港テクノ株式会社に入社後、全国ビルクリーニング技能競技会で最年少優勝。羽田空港の清掃を中心に手がけ、同空港が2013年、2014年と連続して「世界一清潔な空港」に選出された功労者のひとりとして活躍。2015年4月からは「環境マイスター」として、後輩の育成にあたる。現在約500人いる清掃人のリーダー。3月に著書『“世界一”のカリスマ清掃員が教える!掃除はついでにやりなさい!』(主婦と生活社)を発売。

http://www.shufu.co.jp/books/detail/978-4-391-14785-8