「夏休みを短くするのは反対です。友達とプールに行くのが生きがいだし、夏祭りにも行きたい。もっと工夫すれば、短くせずにすむと思います」
と中学1年の男子生徒はハキハキと答えた。
静岡県榛原郡吉田町。大井川が駿河湾に注ぐ西岸沿いの海街に人口2万9693人が暮らす(5月31日現在)。ウナギやシラス、高級マスクメロンの産地として知られるこの町の小・中学生が、夏休みを奪われるピンチに直面している。
「”町長の野郎〜”と悪態」
同町は吉田中、住吉小、中央小、自橿小の町立全4校について、来年度の夏休みを最短16連休に短縮する方針を決めた。削ったぶんを授業にあてて年間の授業日数を増やし、かわりに時間割を切り上げ、教職員の長時間労働を是正する狙い。週2日は午前中で終わり、午後は翌日の授業準備に取り組めるという。保護者への説明会も行っている。
「一部報道で『夏休み最短10日間程度』と報じられたため、保護者らが混乱している。10日間は平日の日数合計で、前後とあいだの土・日曜日を足せば『最短16日間』という言い方が正しい」と吉田町教育委員会の担当者は説明する。
紛らわしいので「16連休」と表現することにした。
子どもは猛反発。
「宿題がなくならなかったら地獄」(小5男子)
「のんびりできなくなるのがイヤです」(中2女子)
「僕は来春卒業なのでギリギリセーフ。モロに食らう弟は“町長の野郎~”と陰で悪態をついています」(中3男子)
隣接市の生徒らとサッカーや空手などのクラブチームで活動する生徒は、自分たちだけ試合や練習に出られなくなることを心配しているという。
賛成意見は「どっちにしろ受験勉強で遊べないから」(小5男子)、「平日午後にたっぷりゲームができる」(中1男子)とごく少数にとどまった。
保護者にも反対の声が多い。
「16連休でも短い。孫が不憫です」と70代女性は話す。
小4、小1の子どもを持つ40代の母親は「親も楽しみを奪われる」と表情を曇らせた。
「いつまでも一緒に過ごせるわけではないから貴重な時間だと思う。実家の両親も孫が泊まりに来るのを楽しみにしているからガッカリするだろう。今年の夏休みだって昨年より減って、宿題を追い込む最終日と花火大会が重なってしまった。次の日は学校だから夜は早く寝かせないといけないし、子どもがかわいそうだ」(同じ母親)
夏休み期間は学校ごとに異なる。文科省は「法令上、学校休業日は学校設置者(自治体の教委)が決める。例えば寒冷地では冬休みが長く夏休みが短いなど地域の実情に合わせている」(初等中等教育局・企画調査係)と説明する。