ペットのカタツムリと意思疎通がしたくて図鑑にない好物や学習能力を実験で証明!
■当時小5(現在小6)八田知也くん
小学2年生のときに担任の先生からカタツムリ2匹をもらい、飼育を始めた八田知也くん。3年生で、カタツムリはレタスをよく食べることを突きとめた八田くんは「レタスはやわらかいから好物なのか?」という疑問を抱く。4年生ではさまざまなエサをすりつぶしたり、ゼリー状にする「形状実験」を実施。レタスよりも細かく砕いた卵の殻やカルシウム剤をよく食べるという新たな結果を導き出した。
5年生になると「なぜいままで食べたことのないカルシウム剤を好むのか」という疑問から、どのようにエサを見つけるのかを観察。カルシウム剤をいろいろな場所に隠したりして10匹のカタツムリに与えたところ、主に嗅覚を頼りに視覚や経験・記憶も使ってエサを探すことを発見した。
研究の最中、八田くんはひそかな願望を抱いていた。
「犬やネコのようにエサを与えたとき、ワーッと集まって食べてくれたらいいのに」
そこで、音の聞こえないカタツムリとコミュニケーションをとるべく、約90日間、条件反射の実験を実施。エサを与える10分前に色彩が鮮やかなピカソの絵『鏡の前の少女』を飼育ケースの前に置き、給餌直前にカタツムリの殻を3回ノックすることで、給餌時間を教えるようにした。2週間後、絵に反応する個体が出現。後半から絵に反応する個体は減り、ノックに反応するように。八田くんは「絵を見てすぐにエサをもらえないと学習したから」と推論した。
「エサを持っていったら集まって食べだす」という夢こそ叶わなかったが、「コミュニケーションをとるヒントを見つけた。距離が縮まった気がしてうれしい」と笑顔を見せる。
5年生で行った「食生活を通してのかたつむりと僕とのコミュニケーション」は、『自然科学観察コンクール』で見事、入賞。内容は大人顔負けだが、可愛らしいのはカタツムリへの愛情が感じられること。サプリメントを与える実験では「サプリだけで弱ってしまったらつらいので、少しは普通のエサも与える」と条件を譲歩したり、「殻をノックするとき、たたくとかわいそうだから指でそっと」など、やさしい人柄があらわれている。
今年の自由研究は、さらに発展的な課題に取り組んでいるというが、詳しい内容は「まだ秘密です」とのこと。科学者として、研究発表のタイミングの重要性を知っているのだ。そんな小さな科学者を育てた両親は、
「集中力をつける。これが育児のコンセプトでした。何かに集中していたら、邪魔をせず見守ることで、子どもが自ら発見する機会を得られるように心がけました」(お父さん)
幼いころから自然に触れさせ、観察する力や創造性を育むようにもしていたという。
「すぐ近所の公園に行くのに朝からお弁当を持って、暗くなるまでずっと外で集中して遊ぶような子どもでしたね」(お母さん)
なんでも家族で話し合う八田家。自由研究も「まったく反応しなかったらやばいよね」など、ワイワイ話し合いながら取り組んだ。八田くんが疑問に思ったことを粘り強く観察し、まとめを導き出す背景には、研究を楽しくサポートする両親の姿があった。生きもの以外のことにも興味津々。学校の勉強で好きなのは、歴史や地理だという。
「歴史のつながりがわかったり、行ったことのない地域について知るのがおもしろい。最近は法律にも興味がある。将来は裁判官もいいなあ」
好奇心旺盛な少年の未来は無限に広がる。
【八田家のおもしろ子育てルール】
◎幼少時の遊び道具は自然のもの
完成品のおもちゃよりも、積み木や外遊びをさせることで創造性を育むように。山に行けば、棒1本、小石ひとつでずっと遊べるように!
◎車は使わず、歩く!
歩けるようになった1歳半でベビーカーは使用禁止! 車も使わず、できるだけ歩かせ自然に触れられるようにしていた。
◎急かさない、邪魔をしない
集中力を育むため「待つ」子育てを徹底。5分で帰れる距離が1時間になってしまったとしても、途中で昆虫や植物の観察をする知也くんをせかすことはない。
◎しりとりで語彙力を伸ばす
八田家の遊びの定番といえば、しりとり。「歴史の人物」「日本の地名」などの制約を設け親子3人でしりとりをして、語彙力や頭の回転力を鍛えている。