本来であれば、夫の死後は妻が財産を相続し、管理をするのが普通だ。しかし、大山は現在、病気のため意思確認が取れない状態にあり、ふたりに子どもはいない。
近しい関係にして彼らを長らくサポートしていたマネージャーや、砂川さんには3人の兄弟がいるが、こういった場合、財産は誰が引き継ぐのだろう。財産分与に詳しい『弁護士法人・響』の西原和俊弁護士によると、
「普通は妻の大山さんが4分の3を受け取り、残りの4分の1を兄弟で分けることになります。マネージャーさんは相続人ではないので、基本は受け取れませんが、砂川さんの遺言書の内容によっては、一部を受け取れる可能性はあります」
また、認知症などによって財産管理できない人に代わって、代理で支払いができる成年後見人制度もある。
「成年後見人には子ども、配偶者などの親族がなることもできます。しかし、大山さんのように身内がいない場合は、弁護士などの専門家が選任されることが多いです」(前出・西原弁護士)
「啓介が死んだって認識はないんだから」
マネージャーのK氏に成年後見人は誰かを確認したが、
「その件についてはお答えできません」
砂川さん夫妻にとって、遺産相続は重要なテーマではなかっただろう。
しかし、“子どもがなく、妻が認知症を患っている最中に夫が亡くなる”というケースは、少子高齢化が進む日本では今後、増えてくることも考えられる。
毒蝮も介護疲れで逝ってしまった親友を惜しみながら、自らの将来についても『週刊女性』にこう案じていた。
「あいつはとにかく子どもが好きなやつだったんだよな。でも、現実には子どもがいなくて、相手が病気で認知症で……。それで自分は介護疲れで逝ってしまう。
ひとつの大きな現実だよね。彼女は身体は元気なようだけど、永久に啓介が死んだって認識はないんだから。俺も子どもがいないから、今のうちに姪っ子にいろいろ頼んでおかないといけないなって思うようになったよ」
医療の進歩で長生きできる時代になったのはいいが、老々介護という現実をより身近に考えていかなければならなくなったのかもしれない。